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もう一度仲間と始める冒険生活  作者: 四月一日
2/8

第2話 解散


「俺このパーティから抜けるわ」


イツキのその一言に場の空気が凍った。

今は厨房で料理をしている従業員を除けば居酒屋には五人しかいない。

そのためイツキの言葉は全員の耳に届いた。


「何だって?」

葡萄酒の入ったジョッキを片手に、魔法剣士のレオナルド・バレンタインはイツキの言葉を聞き返した。


他の仲間も同様にイツキに視線を向ける。

「俺、このパーティから抜ける」

仲間からの視線を浴びながらイツキは同じことを繰り返した。


「本気なの?」

隣で治療師ティナと仲良く談笑していた魔女のプリシラがイツキに問いただす。


「ああ、もちろん」

「そりゃあいい!今度は何に転職するつもりだい?農家か?それとも商人?」

レオナルドは笑いながらイツキの肩を組んだ。


「僕だったら一度は詩人になってみたいところだな!はははっ」

「なんだ冗談なのね」

プリシラは安堵した様子でスープを口に運ぶ。


「冗談じゃない、本気だ」

「…さすがにそろそろ笑えないぞイツキ」

「本当に抜けるの?」

ホタルが心配そうな顔を浮かべながらイツキに聞く。

「本気さ」

そして肩を組んでいたレオナルドの腕を取り払うイツキ。


「もう、十分だろ」

「何を言っているんだい?」

「今日でSSクラスの魔物を退治したんだし、あとは他の異世界者に任せればいいだろ」

「本気で言っているのかい?」

「ああ」

イツキは静かに立ち上がった。そして周りの注目している中、首にぶら下げていた冒険者のペンダントを外した。


その様子にティナが一言つぶやく。

「もしかして、私のせい?私がちゃんとパーティに貢献できてないから?」

「いいや、そうじゃないさ」

ティナのほうを向き首を振るイツキ。

「ただ、俺も他のことがしたくなったんだ。冒険者以外で」

そう言ってイツキはそのまま店を出ようとする。


「そんなことが許されると思っているのか!!」

すると、声を荒げてレオナルドが立ち上がった。


「君は異世界者だろ!何のために祝福<ギフト>が施されていると思っているんだ!」


祝福<ギフト>異世界転生した者には神から強力な施しを受ける。

それは低級の魔物程度では傷一つつけられないほどの強靭な体、そして本人の好みの強力なスキルを手に入れることができる。


「俺以外にも異世界者はたくさんいるだろ、もちろん全員祝福<ギフト>も持っている。それに俺が魔物を狩りつくしたら、そっちのほうが異世界者にとっては迷惑だろ」

「異世界者にとって…迷惑?」

ティナが驚いた表情でイツキを見ていた。


「ああ、俺が魔物を狩りつくせば異世界者は冒険する理由がなくなる。それだと…」

「なんだ!そのふざけた理由は!」

レオナルドが遮り声を荒げた。


「君たちにとってはここは異世界だとしても、ここでは多くの人たちが魔物に苦しんでいるんだぞ!」

「だから、それは他の異世界者に…」

「そういうことが言いたいんじゃない!!」


レオナルドはさらに声を上げる。その表情は怒りに満ちていた。

「君はこの世界を救うために来たんだろう!だったらその責務を放棄するなど言語道断だ!!」


するとイツキは下を向き拳を震わせながら声を絞り出す。

「なんだよ…!勝手に責任を押し付けて…!」

「何か言いたいことでもあるのか!」

するとイツキはレオナルドの胸倉をつかみ壁際まで押し付けた。


「二人とも落ち着きなさい!!」

プリシラがすかさず二人を制する。

だが、イツキは胸倉を離さずレオナルドに吐き捨てるように語った。


「お前たちにとって俺はそんな存在なのか!一生冒険者として死ぬまで魔物と戦わせ続けさせるような存在だと!いいか!俺は道具なんかじゃない!」


イツキの言葉に胸倉をつかまれているレオナルドは、目を開き驚いた様子で何も言わなくなってしまった。


「俺にだって自由はあるだろう!この世界を好きに生きる自由が!」


その横で止めに入ろうとしていたプリシラは、イツキの顔をその表情を見て手を引っ込めた。


「それを俺から奪うんじゃない!!」


イツキとレオナルドを遠目から見ていた、ティナは両手で顔を覆い誰にも気づかれないよう涙を流した。


そしてホタルは…




読んでいただきありがとうございました。

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