第1話 再冒険
初めにこの作品は素人が書いたありきたりな異世界転生作品です。
しかし、この作品は異世界転生してから2年後が舞台となってます。
本来なら異世界転生し活躍するのがポピュラーですが、あえてその先主人公が活躍した後の話を軸に作られています。
どのような結末を迎えるのかどうぞお楽しみください。
家の外に二人の少女が立っていた。
「ここであってるんですか?」
「うん、多分…ごめんね私も始めてきたから」
そう言い元第一級冒険者のホタルは苦笑した。
白い肌に黒曜石のように黒いつぶらな瞳。フードからはみ出たショートボブの黒髪は雪がまとわりついている。彼女が着ている灰色のローブは髪以上に雪がまとわりついていた。
そしてもう一人の少女、アオイも同じ灰色のローブを着ており雪に覆われている。彼女は震える手を何度もこすり白い息を吐いている。そして青色の透き通るような瞳は不安に揺れていた。
それもそのはずで、今この村では村人でも外へ出ることをためらうほどの吹雪に見舞われている。
もしここに目的の人物がいなければ、来た道を引き返さなければならない。
それは冒険者でもない12才の少女アオイにはあまりにも過酷すぎる。
(どうか、ここに居ますように)
ホタルは緊張した面持ちで扉をたたいた。
暫くたったのち扉が開いた。
そして扉をあけた黒髪の中肉中背の青年、元パーティメンバーだったイツキは驚いた表情を浮かべた。
「ホタルか?」
「うん、久しぶりだね」
「ああ…一年ぶりだな」
「上がっていい?」
ホタルがそういうとイツキは家の中へ案内した。
暖炉の火の傍で二人が温まっているところに俺は鍋を持ってきた。
そしてテーブルの上に置き二人に話しかける。
「スープあるけど飲む?」
「もらう!」
元気よく返事を返すホタル、ちらりともう一人の少女を見ると
「えっと…」
どうやら返事に困っている様子だった。
「こんな吹雪に歩いてきたんなら、寒かったろう?温まるぞ」
「…はい」
少女は少し下を向き返事を返した。
俺は二人分のスープを皿によそい暖炉の傍の二人に渡した。
「やっぱり、イツキが作ったスープはおいしいね」
ホタルは口元をほころばせてスープを飲んでいる。
「そうかい」
俺から言わせればもう食べ飽きたシカのスープだ。
この異世界にはうま味調味料なんてものはない。
そのため、この手のスープはハーブなどで香りづけする程度のことしかできず、正直元の世界のほうが遥かにうまい。
「それで、その子は誰?」
俺は二人が食べ終わるまで待ち、ホタルに話しかけた。
「えっと、話せば長いんだけど…」
「単刀直入に頼む」
ホタルは要点を絞ってしゃべるのが苦手だ、なので本当に長い話になってしまう。
パーティを組んでいた間ホタルの話に何度も頭を悩まされたものだ。
「えっとね、私がパーティ解散した後にね他のとこにも入ってね、それでいろいろゴブリンのキングとか水竜だったかな?川にいるモンスター退治とかねしてたんだけど、でも仲間がいっぱい死んじゃって…、お金も無くなってきて…、それで…」
「まった!」
俺はホタルの話を止めた。
ええと整理すると、俺たちのパーティに解散した後別のとこにはいった?
(おそらくは別のパーティに入ったということなのだろう…)
必死にホタルの言っていることを頭の中で翻訳する。
それでゴブリンのキングとかの話はそのパーティ内での冒険話なのだろう。
で、仲間がやられてしまった。
これは何というか残念というか、異世界から来た人間ではない場合冒険はかなりのリスクがある。本人たちもそれは承知の上だろう。
あとはお金が無くなったのはおそらく彼女がスラム出身が原因だろう。
学校教育を受けていない彼女は、昔からお金の計算などが得意ではなかった。
時間をかけここまでは何とか分かった。ただ…
「すまん、もうちょっと分かりやすくしてくれ、後できればその子と、どこで知り合ったかというところから頼む」
「うん、それでねどうしようか悩んでいたら、私に仕事の依頼が来たの」
俺が言ったことをちゃんと理解しているのだろうか…?
「それがこの子アオイちゃんを、ノルデンにある神殿まで連れて行ってほしいって」
理解していたようだ。
「なるほどな、最初のほうの話ほぼいらなかったな」
パーティ解散後に、お金が無くなって1人では難しい依頼を受けた。
これだけ言えばよかったのでは?
俺は腕を組んで上を向いた。
ノルデンか、ここからだとかなりの距離がある。
先ほどの話だとお金がないため馬車は雇えないだろう、となると歩きで行くしかないのだが冒険者でもない少女と一緒では到底不可能な距離だ。
はっきり言って無謀である。
「だからイツキにお願いがあるの」
「馬車代を出せと?」
「ううん、一緒にアオイちゃんを神殿まで連れてってほしい」
「そこまでさせる気かよ…」
俺は嫌そうな顔でホタルを見る。
「お願い!ここまで何度も魔物に襲われてすごく大変だったんだよ!イツキがいないと私たち死んじゃうよ!」
ホタルは頭を下げた。
「断る」
俺ははっきりとホタルに告げた。
冗談じゃないもう冒険はこりごりだ。俺はこの町でゆっくりと本を読んだりして自堕落的な生活がしたいんだ。
それに元とはいえ第一級冒険者だったんだから、死ぬなんてことはないだろう。脅しにしてもそれでは俺は絶対に動かない。
「初めてイツキがこの世界に来た時色々お世話したじゃん!」
ホタルは食い下がってきた。
「そうだが…だったら旅費のお金なら出すからそれでいいだろ」
「だめだよ!一緒についてきてよ!」
それでは不満の様子だ。こうなるとホタルは面倒くさい、経験則からして駄々をこねまくるだろう。
そして少しでも考える隙を見せれば、その途端泣き脅しまでして強引に連れて行こうとするだろう。
(そうはいくもんか)
俺は毅然とした態度をとった。
「いやだ行かない」
そしてはっきりとさっきよりも強い口調で断る。
するとホタルは「うぅ…」とひるんだ。
どうやらここまできっぱり断られるとは考えていなかったようだ。
(勝ったな)
俺は勝ち誇った顔でホタルに話しかける。
「それじゃあ、旅費のお金は出すからあとはそれで何とかしろよ」
「でも…だって…」
ホタルは何度も反論をしよとしているが言葉が出ない様子だ。
俺は席を立ち自分の寝室へお金を取りに行こうとする。
「待って…」
ホタルが弱々しい声で俺を引き留める。
「なんだ?」
俺は振り返りホタルに返事を返す。
他に何か言い訳でも見つかったのか?
俺がホタルの次の言葉を待つもホタルは「あぅ…」とか「いや…」とか中々次の言葉が出てこない。
何か葛藤している様子だ。
しばらく様子を見るも、口をパクパクさせているだけだ。
「何もないなら、お金取ってくるから待ってろ」
「その…」
「なんなんだ?」
「責任とって…」
ホタルは拳を強く握り下を向いている。
「責任?」
何の責任だ?俺はこいつとは元パーティメンバーだった以外は何の関係も持っていないのだが?
「パーティ解散した責任…イツキが勝手にやめるって言わなかったら…私もこんなことに…なってなかったんだよ」
「!?」
俺は動揺した、まさかホタルからその言葉が出るとは思わなかった。
「怒っているのか…?」
「ううん…こんなこと言いたくなかった…」
声が震えている、下を向いているのは涙を見せない為なのか。
「私…最低だ…」
ホタルは静かにつぶやいた。
俺は何も言えず下を向いた。
そうだ、俺が最初にパーティを抜けるといった。
パーティの仲間は冗談だと思っていたようだが俺の意志は硬く、最後はみんなの前で俺は一人去った。
そのあとのことは知らない。
まさかホタルがこんな目にあっていたなんてことは、つゆ知らずにずっと一人で気ままに生活していた。
意外にも、ホタルの言葉は俺にかなり刺さる一言だった。
何も言い返す言葉が出てこない。
「ごめん、忘れて…」
ホタルが俺にぎこちない笑みを浮かべてを向けてしゃべった。
俺はホタルのこの表情を知っている。
ホタルは辛いことがあったり悲しい時があればいつも笑顔をつくる。
本当はとても辛くても、自分は大丈夫だからと、俺をあるいは自分自身を安心させるために無理やり笑顔を作る。
今その顔をされるとかなりつらい。
俺は目をつぶりそして息を吸い込んだ。
もうわかっている。
自分はその罪からは逃れられないことを頭ではわかっている。
だから後は覚悟を決めるだけだ。
そしてゆっくりと息を吐きそしてしっかりとホタルの顔を見つめる。
「分かった」
「え…?」
「一緒に行くよ」
「本当に…?」
かすれた声でホタルが俺に近づいてくる。
「ああ、一緒に依頼をこなそう」
俺ははっきりとホタルに告げた。
もう一度冒険の始まりだ。
読んでいただき本当にありがとうございます。
もしここまで読んでいただけたなら本当にうれしいです。
というのも私の作品はこれで二つ目の作品であり、最初の作品は誰からも読まれずに終わってしまったのです。
なのでここまで読んでいただけたなら本当に幸せです。
最後にこちらの作品のレビューや評価をお願いしてもよろしいでしょうか?
不躾なお願いだとわかってはいますが、どうかブックマークに登録していただけるだけでも、私はこれからもこの作品を書き続けることができます。