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22話 少女との距離が縮まりそうな話

 羽目を外して飲み続けた結果、フラフラな状態で帰って来たレイブンとベクターがベッドにて爆睡していた時のこと。


 メロウ、フィリアナ、フィーネの三人は仲良く湯船に浸かっていた。

 本来三人用ではないためかなり狭いが、フィーネがまだ幼子であることが幸いし、なんとか収まっている。


「ふー、あったかい♪」


 フィーネは満足気に湯をすくっては落として遊んでいる。

 年相応の可愛らしさがあって微笑ましい光景だった。


「...こうしてフィーネと親子でのんびりできるのも、何年ぶりかしら。貴女やレイブン君たちのおかげね」


「…はい。レイブンさんは何も知らない人に魔王なんて言われていますが、底抜けのお人好しなんですよ」


 メロウははにかむように笑った。


「レイブンお兄さんはとっても優しいよ!フィーネともよく遊んでくれる!」


 はしゃぐ娘を尻目に、フィリアナはメロウを優しく見つめた。

 メロウはきょとんとしている。


「そうね、レイブン君は誰に対しても優しい。…この意味、わかるかしら?」


「?」


「貴女……彼との正式なお付き合いはまだですね?」


「それはそうですけど……あっ」


「レイブン君の『仮初め』の姿、贔屓目なしで見ても整っています。…彼には、まだ選択の余地がありますね」



「!!」


 メロウがはっとして目を見開き、口元を押さえた。

 フィリアナは真剣な目をした。


「お兄さんには女の人の知り合いもいたよー!ドラゴンさんも女の人に変身したし!」


「気持ちを伝えるのは早いに越したことはありません。同棲しているからって、安心しちゃダメだよ?」


 メロウの表情に焦りが見える。

 特に目立ったライバルがいるわけではないが、レイブンのあの容姿や優しさを考えると、悠長はしていられない。


「ふぃ、フィリアナさん。私はどうすればいいんでょうか」


「…」


「…フィリアナさん?」


 フィリアナは目を閉じ、人差し指を口元に当てている。

 メロウとフィーネは顔を見合わせ、揃って首を傾げた。


「私からはここまで。これからどうするかは、メロウちゃん。貴女次第ですよ」


 そう言うと、フィリアナは身体を持ち上げて湯船から出た。

 呼び止める間もなく浴室を抜けてしまい、湯船の中にメロウとフィーネが取り残される。


「ママ、なんか楽しそうだったね」


「私を応援してくれているのでしょうか…」


「『恋』ってむずかしいね~。フィーネにはよくわかんない」


「ふふ、まだ大丈夫ですよ。私と違って子供ですから」


「むー。…いいもん。フィーネはママの子供だから、お姉さんよりもおっぱい大きい『ないすばでぃ』な大人になるもん」


「な!?」


「おっぱいが嫌いな男の子はどこにもいないって、フィーネ知ってるもん。お兄さんを誘惑して邪魔してやる!」


「~~!!」


 ドヤ顔で威張るように胸を張る九歳。湯の温度とは関係なく顔を赤らめて右腕でやや控えめな胸を隠す十七歳。

 その後狭い湯船の内部にて、少女二人がじゃれあう光景がしばらく広がった。




 女性三人で夕食を終え、就寝の時刻。

 フィリアナとフィーネはリビングに残り、ソファやテーブルを動かしてから魔法で部屋の中心にベッドを生成して眠りについた。

 メロウにもはっきりとわかる、でたらめな魔法だった。フィーネがフィリアナの魔力を増幅させて簡単に巨大な即席ベッドを完成させてしまった。


 そうして二人はくっついてすやすや。なんとも微笑ましい光景だった。

 メロウは自室のベッドに一人。部屋は真っ暗で、今にも眠りに落ちそうな様子ではあるが…


(眠れません…)


 暗がりの中、その眼はしっかり開いていた。

 フィリアナの発言がずっと気がかりになっている。

 レイブンさんの一番近くにいるのは間違いなく私。けれど、あの人は誰にでも優しいから、その優しさを知ったらきっと多くの女性が近寄ってくる。


 その時、私より魅力的な女性がいたら…。

 不安ばかりが蓄積されていく。


「…」




(来ちゃいました…)


 現在メロウは自室を抜け出し、レイブンとベクターが眠っている部屋の中。

 泥酔して深い眠りについているレイブン(姿はブレイン)の隣に立っている。


 見た感じ、二人とも完全に意識は蚊帳の外。メロウの息遣いや心臓の鼓動には気づくよしもない。


「…」


 メロウは、そっとレイブンの右手を取り、優しく包み込むように両手で握った。

 人形の手には違いないが、確かに温もりが伝わってくる。


(あったかい…。本当の姿のレイブンさんの手だったらもっと良かったのですが…)


 あの時、私にリビールの実を渡してくれた人。

 嫌われる覚悟でミノタウロスから私を守ってくれた人。

 その手の温もりは、私にとってはより一層温かく感じた。


(レイブンさん。貴方が思っているよりも、私は貴方のことを愛しているんですよ)


 これからもずっと一緒に冒険して、ご飯を食べて、仲良くしていたい。

 えっちなことを考えていたとしたら、恥ずかしいけれど応えたい。

 だから…。


 包み込む手を放して、彼の頭の後ろに添える。

 寝顔が至近距離に現れる。

 近くで見ても端麗な顔立ち。…でも、私は黒い髪で双剣がよく似合う、あのレイブン・グルジオが好き。本当はその姿のレイブンさんがいいんだけど…、こんな状況でもないと私には勇気が出ないから…。


 メロウはそっと自分の顔をレイブンへと近づけていく。

 そして目を閉じた。心臓の鼓動も感じ取れそうなほど密着している。

 少しずつ唇と唇が近づき、重なろうとしたその時、


「…んあ」


「ひっ!?」


 レイブンの声が聞こえ、慌ててメロウは手を放しベッドの脇に座り込んで避難した。

 恐る恐る立ち上がり、もう一度眠っているはずのレイブンの姿を見る。


「ん…ダン…なんだよ…」


 その目は閉じたままで、口元だけが微かに動いていた。

 寝言だ。


(ふぅ…びっくりしました…。見つかったら羞恥心で死んでしまいます…)


「なあダン…どうして俺を…キャバクラに巻き込もうとする…?」


「…どんな夢を見ているんですか?」


 メロウはジト目でレイブンを睨みつけた。

 だが、内心では焦りも感じていた。

 …最も、彼はそういう系統の女性になびくタイプではないし、親しくない女性に手を出すことはできない。…私とそういう雰囲気にならないのがプロポーションのせいだったら、泣きながら毎日ミルクを飲みます。


(…ファーストキスはレイブンさんが起きている時に、抱きしめてもらいながらしたいですね…♪)


 メロウはレイブンの傍を離れ、自室に戻った。

 そしてメロウがいなくなり、静まり返った室内にて、男が一人。


「…甘酸っぱいねえ」


 メロウが傍に来た際に気配を感じ取ったベクターは、酒の酔いも醒めて目覚めていた。

 薄目を開けて様子を覗くと、既に彼女は眠りこけるレイブンの手を握っていたので、何も干渉せずに見守っていた。


(フィリアナがいなかったら、きっと私はあの嬢ちゃんに恋していたよ…。青年、嬢ちゃんの幸せにはお前さんが必要だ。もうお前さんは煙たがられるだけの魔王ではなく、誰かにとって必要な存在になっていること、忘れるな)


 ベクターは隣で背を向けているレイブンをじっと見て、心の中でそう唱えた。

 当の本人はそんなことはいざ知らず、寝息を立てて熟睡。さっきのメロウとの出来事にも全く気付いていないようだ。


(…それはそうと、なぜ手を縛られているんだ?酔った勢いでフィリアナに迫ったからだろうか…。うーむ、完全に私の落ち度だ。朝になったら、頭を撫でて機嫌を取るしかないか…とりあえず寝るとしよう)


 ベクターは泥酔してからの自分の行いを反省し、もう一度眠った。


 ☆


 俺は幻滅した。

 メロウは苦笑いで静観。


「誠に申し訳ありませんでした」


「…」


 翌日の朝。メロウの家のリビングにて。

 元衛兵隊長が恥も臆面もなく、妻の前で土下座していた。


「パパ、お酒は飲みすぎちゃダメだよ?」


「ハイ」


 娘に頭をよしよしさせられる父親。流石に情けない姿だった。

 そして、ここメロウの家なんだが…。他人の家の中で何やってんだこの家族は。


「…では、私たちはこの辺りでお暇しましょうか」


「…だな。世話になったぞ、少年少女よ」


 おっさんは何事もなかったかのように立ち上がり、俺たちに向かって敬礼した。

 …今必死に取り繕っても、さっきの土下座はなかったことにならないぞ?


「楽しかったねー!」


「ええ!」


 女子会とやらの方は盛り上がったらしい。

 …俺はおっさんに振り回されて酒を飲んで、気が付いたら次の日になっていた。並べてみると中々に酷いな。

 まあ、男同士の秘密ってのを話すのは楽しかったからいいか。メロウには言えない想いってのを吐き出せた気がする。よく覚えていない部分も多いけど。


 こうして三人家族は玄関から家を出た。

 俺たちも見送りのために家の外へ。


「また会おう」


「またねー!」


 フィーネが笑顔で手を振っている。

 俺も軽く手を挙げた。


「ぜひ私たちの家にもいらしてください。男の子の心をガッチリ掴む料理、教えてあげますよ」


「!!」


 メロウの目が輝いた。

 今でもかなり料理上手だと思うが、向上心ってやつだろうか。

 俺も今の戦闘力で十分だとは思っていないし、それと似たような感覚なのかもしれない。


「なあおっさん。帰る前に一つ、聞いてもいいか?」


「…聞こう」


「初めて会ったあの時、いきなり決闘をしかけてきたのはなぜだ?…家族がいて、隊長の立場もあったってのに、無策に命賭けるほどアンタは馬鹿じゃないはずだが」


「ああ、そのことか」


 おっさんは不敵に笑った。

 …なんだ、その余裕は。


「『転生魔王』討伐の手柄を立てたら、妻と娘が解放されるとふんだからさ」


「…ふふ。今更そんな甘いことを言っても、昨日のことはなくなりませんよ?」


 そうは言いつつも、フィリアナは嬉しそうにほほ笑んでいた。

 フィーネが生まれる前の頃は、それはそれはバカップルだったのだろう。


「…あとは、お前さんの良心を信じた。魔王が実際に殺人を犯した話は聞いたことがない。これまでも…そしてこれからもな」


「…後からでは何とでも言えるさ」


 何を感じたのかわからないが、俺はおっさんと拳を突き合わせた。

 これが男の友情というやつだろうか。『言葉じゃなくて拳で語る』とかいう。


「なんかカッコいい!!」


 フィーネが目をキラキラさせて俺たち二人を見ていた。

 冷静になると、なんか気恥ずかしい。


「…では」


「…またな」


 こうして家族は彼らの家へと戻っていった。

 家の前に俺とメロウが残される。


「大変な二日間だったな」


「そうですね…」


「なあ、メロウ」


「はい?」


 メロウは首を傾げた。

 俺は両手を広げて服を見せてみる。


「今の俺の服装だったら、問題ないか?」


「? 何のことですか?」


「いや、何というか…清潔な服装にしろってフィリアナさんに言われてさ」


「清潔な服装だと思いますよ。でも、この後には何も予定なんて…あ」


 メロウの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。

 あれ、俺まずいこと言ったか?


「も、もしかして…ベッドに誘っているんですか?」


「ん…?いや!断じて違うぞ!!」


 やってしまった。

 確かに、さっきの俺の発言はそう捕らえられてもおかしくない。

 メロウは両手で顔を押さえて…いない。顔を真っ赤にしながらもこちらを見つめている。


「…。」


 この状況で家に二人きりになるとまずい。

 間違いなく嫌われる。メロウは卑猥な話が平気なタイプじゃない。


「…優しくお願いしまきゃあっ!?」


 俺はメロウの腰に手を当てた。


 彼女の腰に装着してある袋の中を漁り、赤い通信機を取り出す。

 これだこれ。


「悪い。ちょっと借りるぞ」


「はぁ、はぁ…はい」


 開けて、とある人物に連絡を入れる。

 要は、二人きりにならなければいいのだから…


『はい、もしもし、メロウちゃん?』


「いや俺だ」


『…また面倒ごとを押し付けに来たのかい?そろそろ僕もキレるよ?』


 嗚呼、ダンケルいら立っているっぽい。

 まあ、何度も家に突っ込んで色々させたから仕方ないか。


「今回はあれだ。用事はないがお前の家に行っていいか?メロウも一緒に」


『それなら構わないけど…何があったの?』


「まあ色々あってな…。とりあえず行くわ」


 そして長話をすることなく通話が終了。

 メロウの手に通信機を置いた。


「というわけで、ダンケルの家に行こう。それなら襲われる心配もないだろ」


「…ソウデスネ」


 メロウはもう顔の赤みは引いていて、細目でこちらを睨むように見つめている。

 なぜ片言。これが最適解だと思ったんだが。




「…意気地なし(小声)」


「何か言ったか?」


「何も言ってないです」


 そっぽを向いてしまった。

 やはり女心は全くわからない。

 それとも俺が童〇をこじらせておかしい言動をしているだけなのか。

 ちょうどいい、ダンに聞いてみるか。


 ☆


「———という話だ」


「レイ、一回死んでもらっていい?」


 俺は昨日と今日起きた全てを話した。

 するとダンケルは顔面に青筋をビキビキと立てて、殺気立った様子でこちらを見ている。


 メロウは隣の部屋でリオンと何やら話し込んでいる。

 男同士、女同士(リオンの性別はよくわからんが)での対話が成立状態。


「…つまりさ、レイの話を要約すると『メロウちゃんといい雰囲気になりそうだけど、下心を意識されて嫌われたくないから二人きりじゃない状況にしてくれ』ってことでしょ?」


「まあそうなるな」


「よし百万発殴らせろ」


「なんでそうなるんだよ」


「もはやこれ以上貴様の狼藉を見過ごすわけにはいかぬ。まずはリア充撲滅への一手として親友との絆を破壊する」


「ダンケル…?キャラが行方不明になってるぞ…」


「我はリア充を許さない。夢喰いの怪物よ、この男の愛を喰らい尽くせ」


 何を言ってるんだ。

 なんか覇気みたいなオーラがあふれ出している。

 このまま放置しておくと、後で殴られるだけでは済まない気がする。


 俺にも最低限利益がある形でコイツの怒りを発散させる方法は…。

 あった。


「ちょうどいい機会か」


 俺は立ち上がり、それこそ魔王のような風格で座っている目の前の友に手を差し出す。


「試したいことがある。この家、空き部屋はあるか?」




「死ねえ!!」


 ダンケルが怒りに狂うままに拳を握り、俺の顔面に一直線の右ストレート。

 俺はそれをまともに食らい、衝撃を受け流しきれずに後方に倒れこむ。


「うぐ…」


 自分の手を確認する。

 出血はなさそうだ。


「ダン……これじゃ駄目みたいだ。もっと強く頼む」


「リア充は滅びろおおおおおおお」


 全力の肩パン。

 脱臼するかと思うほどの一撃。俺はどれだけ恨まれているんだ。


「まだだ。もっと強く殴ってくれ」


「魔王の癖にウジウジしててきめえんだよ!!」


 抵抗する間もなく、腹に強烈な蹴りを入れられた。

 今日の朝飯が口から出てきそうな嗚咽感。


 俺は部屋の壁に打ち付けられ、そのまま身体が下へとずり落ちる。

 手に擦り傷ができて、鮮血が滴っていた。


「ふう…これくらいダメージを受けると戻されるみたいだな」


 今の俺はレイブン・グルジオ本体。

 …さっきまではブレインだったが。


 ダンジョン内でカイン達と初めて遭遇した際、ぶん殴られて勝手にブレインからレイブンに戻されたことがあった。

 あれ以来完全に放置していたが、戻される基準はよくわかっていない。

 放置しておくと、人前でいきなりレイブンが登場して全てがバレる最悪な事態になりかねない。だから、戻る・戻らないの基準を把握したいとは前々から考えていた。


 …だが、これを試すには実際に俺がダメージを受けるしかない。自傷は参考になりにくい上、絵面がまずいからナシ。


 メロウに頼むのはどう考えても不可能。というか、メロウに殴られたら互いに精神的なダメージが尋常じゃない気がする。


 スイランもパス。昨日のおっさんの話が頭によぎって、多少の警戒が必要になった。

 俺の秘密に関わるような話は簡単にはできない。


 おっさんは…なんか嫌だ。


 結果、ダンケルとリオンくらいしか選択肢が残らなかった。


 普通に『俺を殴ってくれ』なんて発言をしたらどう考えてもドン引きされるが、今のダンケルは絶賛怒髪天。容赦なく俺を攻撃してきた。


「ふー、ふー、…満足した?」


「…ああ、大体わかった」


 何度も攻撃される内に、なんとなく基準がわかった。


 ・腹や胸などの体幹部分にある程度以上の衝撃を食らうと戻る。

 ・俺自身に蓄積している疲労や負傷は関係ない。

 ・強い衝撃を受けても、レイブンからブレインに移行することはない。


 まあこんなところだ。

 この実験の結果、俺は顔面を中心に全身が痣だらけでボロボロになった。

 ダンケルの野郎、容赦なさすぎだろ。どれだけ俺に恨みがあったんだ。


「よかったあ。流石に僕も罪悪感を感じ始める頃だった」


「こんだけ殴ってようやくか…。お前『リア充』ってのに恨みありすぎじゃないか?」


「研究者は基本的にリア充の敵さ。…メロウちゃんみたいな女の子が彼女に欲しいけど、もう旦那がいるしね」


「誰が旦那だ」


 ダンケルがスッキリして笑う中、俺は傷だらけの身体をなんとか持ち上げて立ち上がる。

 そしてよろけながら物置部屋の出口へと歩いていく。


 この傷はメロウに治してもらおう。

 メロウならこれだけ満身創痍の俺でも余裕だ。


「…レイ、ちょっと待った」


「ん?」


 振り返ると、すぐ目の前にダンケルがいた。

 そして手に持っていた何かを俺の口にねじ込む。


「むぐ!?」


 この口当たり、この味は…。


 傷口がどんどん塞がっていき、赤黒い出血もすぐに収まった。

 ダンケルにボコボコにされた俺の肉体は、まるで何もなかったかのような傷一つない健全な状態になった。


「なんでリビールの実を食わせた…?お前にとっても貴重なものだろうに…」


「わかってないなあ」


 ダンケルは人差し指を動かし、挑発するように語りかける。


「レイがメロウちゃんに治療してもらって、そのまま膝枕なんかでいちゃつく光景を見せられたら、僕はもう一度レイを殴らないといけなくなるよ?」


 満面の笑みでそう答える親友の顔面を、俺は心の底から殴りたくなった。


 …ダンだって、まあ割とイケメンで強い冒険者で金持ち。このめんどくさい性格を除けば、ダン好みの姉御肌の女性からもモテそうなものだが…。研究者ってのは、そんなに女性と縁がないものなのか?


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