心の整形
従兄の大ちゃんは、都にある実家を建て替えるまでの数ヶ月だけ、我が聖沢家にいた。
とは言っても、当時は既に私のほうが家を出、独りで暮らしていたものだから、ほとんど顔を合わせることもなかったが。
だからこれは、珍しく二人とも家に居合わせた日の話。
私が昼頃帰ってきて居間に入ると、テレビ番組が流れていた。「ビューティーコロシアム」という題名。
外見のせいで不幸に見舞われてきた人が、美容整形やダイエットによって人生を劇的に変える。そんな内容だった。
たぶん母が昨夜に録画しておいたのだろう。「これ、そんな面白なかったなぁ」とか横槍を入れている。
そこに寝間着の大ちゃんが、欠伸しながら下りてきた。
番組は誇張もあるのだろうが、制服を着た女子生徒はブスだからという理由で、水をかけられたり泥まみれにされたりと、非道な扱いを受けていた。
「死ね、ブス。ブス。ブス」
ブスは人間として見てもらえない。テレビがそう発したところで、いきなり大ちゃんがキレた。
「何やねんこいつら。クソが。このいじめとる女子のほうが人間性ドブスやんけ。
こいつらこそ、心の整形が必要やろが」
まあテレビだし生放送でもないし、そもそも言ったところで届くはずもないのだが、大ちゃんは起床はじめに激怒。飯を食いながら、まだ文句を言っていた。
それから数年経ち、大ちゃんが結婚した。
相手の女性はたしかに、人々を魅了する美貌の持ち主、というわけではなかった。一方の大ちゃんもなかなかに男前であったはずが、だいぶ太ってきている。
そんな二人の関係性をさらりと言えば、一緒にいる「温度」が合うのだろう。それは何となく、私にも感じられる。
さて。体の整形と心の整形、どちらが難しいだろうか?