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人生は、小説よりも  作者: 聖沢 雅
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天才ゴールキーパー

 私が6年間通っていた富野(との)小学校は当時すでに創立120年の歴史があり、もちろん建物などは昭和に入ってからの建造であったろうけれども、学校全体が古くてボロかった。トイレなんかどこも入りたくない有様だった。

 その校舎からグラウンドを挟んで向こう側には、プールがあった。今思えば何がそんなに楽しかったのか、毎年水泳の授業を心待ちにしていたものだ。


 とは言えプールの出番は7月のごく限られた期間だけであって、一年のほとんどが用無しの施設。入口は柵によって封鎖されており、我々はその柵の手前に位置する数メートルの急坂を用いて遊ぶくらいのものだった。プール前に急坂、なぜそのような構造になっていたのかは知らない。


 さて当時の校庭には、今ならば危険とされ撤去の対象になるような遊具がいくつもあった。登り棒や、子供が内部に入れる大きさのジャンボタイヤなど。そして通常の乗用車のタイヤを複数繋げることで、転がして遊ぶようにしたものがいくつかあった。

 急坂と連結タイヤ。小学校高学年になった私はそれに着目、タイヤを坂の上まで運び、そこから発射して、坂下で構える「ゴールキーパー」がそれを受け止められるかを試す競技のようなものを開発。その種目を我々は「天才ゴールキーパー若林」と名付けた。


「なあ若林やろうぜ」


 昼休み、ヒロとタンクを連れて若林を開始。最初は小さなタイヤを左右に流すことで実際のゴールキーパーに似せた種目として楽しんでいたが、より強い刺激を求めるクソガキ根性は加速してゆく。

 探してきた4連の富野小学校最強タイヤを転がして運搬、やっとの思いで坂の上まで持ってくる。それを射出すると、受け止めようとしたヒロは後方へ吹っ飛んだ。まさに「キャプテン翼」の世界である。

「俺やったらいける。俺に任せとけ」

 今度はタンクの出番だ。奴は最大最速のタイヤを低い姿勢で、やや腰が引けながらも止めてみせた。英雄(ヒーロー)の誕生である。

 しかし私は悪魔的発想で、さらに強度を上げられる方法を編み出す。

(とし)。このタイヤに入れ」

 私は当時小柄だった4歳下の弟 (丸刈り)を校庭に呼び出し、問答無用で4連タイヤに詰めた。その有機物と無機物の合成物質を射出すると、それは(いびつ)な回転で加速しながら坂を下り、英雄(タンク)を襲った。




 この兄は今からでも裁きを受けるべきであると思う。って言うか死んだほうが良い。地獄でタイヤに詰められとけ。

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