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人生は、小説よりも  作者: 聖沢 雅
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お洒落の極意

 仕事で夫婦のお客さんを担当していた時期があったのだけど、お二人とも私の奇抜な外見に対して寛容だった。というのも、私は筋肉がよく発達しているせいで体形が特殊な上、いつも髪を金や赤や緑などのわけわからん色に染めていたのだ。並の人間なら近寄らない。


「ええやん、好きにしとき。歳いって髪の毛が無くなったら、やりたくても出来んなるんやから。あるうちに何でもお洒落(しゃれ)しといたらええ」


 そう言う奥様のほうが特に、私の奇行を気に入ってくださるようだった。




 ある日、奥様が来なくなった。病気だ、しばらくかかりそうだ、退院したらまた妻もよろしく頼む、旦那様はそう言っていた。

 お会いする度、私は奥様の容態を尋ねた。抗がん剤の影響で髪がすべて抜けてしまった、とのことだった。


「髪の毛が無くなったら、やりたくても出来んなるんやから」その言葉の記憶が、私の心に重々しく反響していた。


 そして治療は進み、奥様が帽子を被るようになったと聞いた。ずっと髪のことには触れないでいた旦那様から、そのとき初めて口にしたそうだ。


「おまえ、大変やったな。髪まで無くなってしもて……」


 旦那様の気遣いに、奥様は笑顔で答えたそうだ。


「何言うてんねん。私の髪はこれからまた生えてくるんや、アンタのハゲと一緒にすな」


 数ヶ月後、奥様は完全復活。ベリーショートの白髪混じりを思いきって刈り上げ、染めずにグレイヘアを楽しんでいた。


「もし病気が無かったら、こんな髪型なんて挑戦せんかった思うわ。生まれ変わった気分!」




 そんな奥様の言葉を忘れずに、私も今やれる最高のお洒落を楽しんでいる。先日から完全なホワイトの髪になっているが、評判としては大半が「ご職業はヤクザですか?」である。悲しみの魔人。

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