友の記憶
ナオキという同級生がいた。
今でこそ人外の筋肉を全身に纏う私だけれども、小学生の頃は運動が苦手で仕方なかった。いつもテレビゲームやプラモデル作成に興じていた。
しかしナオキは違っていた。身体は小さくともスポーツ万能、書く字も大きくて綺麗で、おまけに絵まで上手という、クラスのスーパースターだったのだ。
その上に気配りもできるやつで、私は子供ながら、嫉妬というよりは尊敬の念を抱いていた。ナオキが地元の消防士となって活躍している現在も、それは変わっていない。
社会人になってから、同窓会で再び巡り会う二人。
お互い酒に酔いながら、昔の記憶を辿った。そこでナオキから聞かされた言葉は、意外なものだった。
「俺なあ、ずっと雅に憧れててん。絵もすげえ上手いし、雅の書く字もなんか知らんけど好きやってさぁ。ほんま、羨ましかってんで」
何とまあ。子供の時分といったら、走るのが速いとかボールを遠くに投げられるとか、そういうのが正義だったはずなのに。
ナオキは、ごく稀にだけ光る私の力を見逃さず、それに憧れという感情まで抱いてくれていたのだ。
勢い話し続けるナオキは、さらに目を輝かせる。次に語られる友の記憶に、私の心は衝撃さえ覚えた。
「今でもハッキリ覚えてるわ。あんな凄いことやったん、雅だけやったもん。勇者やで。
健康診断の時、渡り廊下も通って保健室までの道、いっつもフルチンで全力疾走してたよなぁ」