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ヨナハ医院
今は名称も変わっているが、実家から坂道を下っていったところに「ヨナハ医院」があった。
病院には恵まれた土地だったし、私自身あまり医者を信頼する人間ではなかったので、利用する機会はなかった。
しかし駅までの道のりにあるヨナハ医院の前は、ほとんど毎日通っていた。母もそんな感じだったはず。
それなのに。ある時、母の過ちは露見する。
「あの角のとこにあるやろ、けったいな名前の病院。ヨハネ医院とかいう」
我が母は、沖縄出身の人の名字によくある「ヨナハ」を、新約聖書の聖人や洗礼者にある名「ヨハネ」と誤読していたのだ。
そして自身は仏教徒であるため、なんだかよくわからないまま避けていたらしい。
気がつくと、院長が代わったらしく、病院の名称も普通になってしまった。
もし次が「湯田医院」で、さらに近隣に「家須クリニック」「六浜戸歯科」なども建っていれば、母の混乱はさらに大きくなり面白かったと思うのだが。




