おばあちゃんVSカタカナ
祖父母くらいの世代の大方はカタカナ語が苦手、という印象がある。
英語を日本語の表記で読めるように配慮してあるのだし、戦後から数十年を経たはずなのだけど、なんでこんな間違いをするのか。孫世代にとっては謎であった。
母方の祖母は特に顕著で、ディズニーを「でずにい」と発音するなどは序の口。
冷蔵庫に貼った買い物リストに「マヨネズー」と書く、マリリン・モンローは「マンロー」と豪快に脱字、刑事コロンボを「クロンボ」と言い出すのはもはや国際問題である。
まだ同居していなかったから、私が小学生か、中学に上がったくらいの頃。祖父母の聖沢家ではレンタルビデオが大流行していた。
伯父と祖母が名作アニメを片っ端から借りてきて、居間で一日じゅう放映し続けていたらしい。最初に聞いたのは「アルプスの少女ハイジ」の話題だったような記憶がある。
あまりにハマったようで、度々うちの母に「これ良えで。あんたも観い」と布教の電話をかけてきていたらしい。そういう人だった。
しかしある日、電話しながら当のアニメの名称を忘れてしまった。
「子供が死んでな、犬も死んでしまうねん。天使が迎えに来てな……」
熱く語りながら必死に題名を思い出そうとして、祖母が放った一言。
「せやから、あんたも観いや。『パーキンソンの犬』」
病気なっとるやんけ。
ちなみに電話の最後のほうは「パーソナルの犬」に変わっていたらしい。どういう間違え方なのか。
次いで、祖母の妹さんが聖沢家に来た時の話。既に祖父母と同居していた時代だから、私は高校生。
「今、ドラマでやってるやつあるやろ。私、あの原作の本を読んでるねん。あれ良えで、雅くんも読み。今度持って来たるさかい」
このパターン、以前にも。
「あれ何て言うたかなぁ……花束なんたらいうやつ。あの……」
「アルジャーノンちゃう? 『アルジャーノンに花束を』」
「あれや。エルニーニョ。『エルニーニョの花束』や」
ちゃんと覚えとけ。そして、ひとの話を聞け。




