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人生は、小説よりも  作者: 聖沢 雅
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言うてみい

 聖沢(ひじりさわ)、母方の祖父母家に泊まった時の話。


 私は小学生くらいだったと思うけれども、その日は母、伯母(おば)、祖母が一階の同じ部屋で寝ていた。


 朝。起きた私が居間に顔を出すと、母と伯母が口を揃えて


「怖かったわぁ」


「ほんま! めっちゃ喋ってたでぇお母さん」


などと祖母を(とが)めている。いったい何があったのか。


 話を聞いてみると、まあ大したことはなくて、ただ祖母の寝言がえらくうるさかった。というもの。しかし当の祖母は


「せやけど、夢かてあんなん許せへんわ。ほんまに、あのおっさん一遍(いっぺん)しばいたろか思て」


と怒り心頭である。


 その夢の内容は……なかなか壮絶だった。


 祖母が介護していた曾祖母 (たしか、その時には既に故人)を施設に預かってもらったところ、ひどい虐待に遭っていたというのだ。


 事態を知った祖母は激怒。職員に詰め寄り、


「これはどういう事や。言うてみい。言うてみい!」


と何度も繰り返し叫んだ、その声が夢の外で寝ていた母たちにまで伝わっていたらしい。


 正義感の強い祖母に相応(ふさわ)しい振舞いである。それが現実でも、きっと同じことをしたと思う。


 とは言え、夜中に突然叫ぶ祖母の姿はあまりに印象深かったようで、その日から「言うてみい~言うてみい~」と実の娘ふたりがステレオでおばあちゃんの寝言を再現しまくる混沌(こんとん)が聖沢家に生じた。


 繰り返されるうち、又聞きの私たち孫三人も真似するようになり、それから一年は「おばあちゃん=言うてみい」と等号で結べるほどに我が家で大流行したのだった。




 大先輩もおちょくる、それが聖沢の血筋。

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