私と主人
どうしてここにいるの!
焦燥と怒りが胸の内を溶かしているみたいだった。
ドロドロとしたどうしようもない感情が出口のない扉をこじ開けようとしているようだ。
掴むものもない掴める手もないのに、叫び声すら上げられないのに、私の器は彼の手元から飛び出そうとしていた。
まだ先のはずだった。
ここにいるはずがないのに。
私が主人と望んだ人がここにいた。
狭い世界の中で、主人を見つけるのは簡単だった。
それでも、主人は幼さすぎて、私を扱うには無理だと分かっていた。
だから、ほんの少しの間、彼と組むのもいいかもと、浮気心を持ってしまった。
それがそもそも間違いだったと気づいたのは、今、ここに居る主人が私ではない別の器を手にしていたから。
もう、それは上げられるものなら、底から叫び声を上げたかった。
鎖に繋がれていない器が主人の手に!
あり得ない!あり得ない!あり得ない!
でも、私が認めた主人だから、野放しの器を暴走させずに扱えている。素晴らしい。
鎖に繋がれていないということは、器の力を全て引き出す可能性がある、ということ。
だから、言ってやったの、不出来な野放しの器に。
鎖に繋がれずにいなさい
主人のために自由な器でありなさい
私が出来ないことを、あなたがするのを許すわ
だから、簡単に壊れてもらっては困るの!
私は、制限を掛けていた繋がりを解放した。
私の器を手にしていた彼が驚いたのが分かった。
何年の付き合いか分かっていて?もう、浮気心なんて思わないわ。あなたと添い遂げる。主人を守れるなら、私を十分にお使いなさい!
私はこの世で最強よ
私の力を使いこなせないなんて言わせないわよ
まだまだ高みを目指しなさいな
主人以外に私を使いこなせる可能性があるあなた。
どうか、私を失望させないで。
高みを目指すなら、私はあなたをパートナーと認めるわ。
ゾクゾクする
あなたもでしょ?
こんな気持ちは久方ぶりよ
存分に暴れましょう。
私の主人のために!
約一年前にポッと思いついて書いた作品を少し追記、訂正をかけ、提出します。
『私』は人ではありません。
意識のある武器です。
思考する武器です。
なので、暴走したりするのです。