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異ノ子  作者: Lie街
3/3

第3話 謎の女

その日は綺麗な満月が夜空に浮かんでいた。冷たい風は、朝の眠気を落とす目覚ましのようで空に散らばった小さな光は手を伸ばせば届きそうなほど煌々と光っていた。そんな夜だった。


「がはっ!」


突然、水面が揺れた。


「ここは…どこだ。あいつはどこに行きやがった。」


突如として現れたその人型は月の光に照らされて、水の上にシルエットが映し出されていた。


「はぁ…はぁ…。」


その男もまた、煌めく空を見上げていた。



2人は戦闘の疲れを少し癒すため、小さな原っぱの木陰に座り込んでいた。


「その鳥食っていいか?」


壱が王様の使いの鳥を子供のようなきらきらとした目で眺めながらそう言った。


「ダメだよ!こいつは食料じゃないんだから。」


鳥から物資を受け取り素早く返した。壱は恨めしそうに鳥を眺めている。


「分けようか?」


「いや、いいさ。なんにしろここは俺の庭だぜ。食料になんて困らないって。」


そう言いながら木々の生い茂る方へ歩いていくとものの数分で猪を1頭捕まえて来た。


「な、言ったろ。」


自慢げに鼻を鳴らしている。そして、慣れた手つきで焚き火をし猪を焼き始めた。


「すごいな、モグモグ、そんなの真似出来ないよ。」


音は届いた食料を頬張りながら呑気に言った。


「まぁ〜ね〜。」


壱は胸を大きく突き出して、鼻の穴を洞窟のようにふくらまし得気なまま猪を焼いている。


「美味かった~!」


壱は風船のように膨らんだお腹をさすりながら、彼らしく大きなゲップを空気が揺れるくらいに豪快に爆発させた。その瞬間であった。




「アイス・ブレット」




壱は身をよじってかわす。




「なんだ!」


壱が叫ぶと音も続けて叫ぶ。


「誰だ!」


森に音の声がこだまする。





「ブリザード・タイマー」


音の右手に雪の玉が張り付く。


「何だこれ。」





数秒後、軽い爆発音とともに音は凍傷を負った。


「くそ、痛てぇ。」


「大丈夫か、音。」


「次からは手加減無しで行くよ。」


冷たい声が響き技が繰り出される。





「アイス・ブレット」





音は間一髪で避ける。


「待て、目的は何だ。どうして、俺たちをこうげきする!」


息もたえたえにおんは叫ぶ。


「ふん、なぜ話さなければならない。」


「ならば仕方ない、1回動きを止めないと。壱、手伝ってくれ。」


「もちろん。」


音は詩を読み始めた。






「凍てつく牙をも焼き尽くす、燃えるこの手を掲げ今…」






音の右手が燃え始める。







「誰よりも強き戦士になる。」







音の叫びと同時に右手は炎に包まれた。







「ふふ、面白い異ノ子だな。スプラッシュ・アイス」







音は右手を盾にし氷をとかし壱は素早く避ける。







「いくぞ、メタファーバーン 火の鳥」


音は素早く走り出し高く飛ぶと、炎の勢いを強めた。







「避けアヴォイド・ゴッド


壱は走りながら傍にあった太い木を手にした。







「勝てるはずないだろう?2段階 アイス・ブレット」


氷の塊が音を狙うがひらりとかわす。







「いけ、壱!」







「しまっ…」







「おらぁぁあ!会心の打撃ホームラン







「ぐっ。」


女は壱の攻撃を紙一重で防御したが、衝撃で後方の木に体を打ち付けた。


「んっ。」


2人は女の間に少し距離を残して尋ねた。


「さぁ、聞かせて貰えるかな?君が戦う理由を。」


数秒の沈黙の後、女は少し笑うと言った。


「もう少し早く来てくれるかな?」


「!?」


音の体が吹き飛ばされた。壱は例のごとく素早く回避し背の高い紳士風の男に回し蹴りをくらわした。


「ほう、今の不意打ちを避けますか。」


「こちとら危険がいっぱい夢いっぱいの山で暮らしてきたんだ。大抵の攻撃は避けれるさ。」


目線を敵に釘付けにしたまま音に向かって叫ぶ。


「おい!大丈夫か!」


耳をすますと森の奥からブツブツと聞こえる。


「さぁ、行きましょうか?」


「あぁ、連れて行ってくれ。一時退散だ。」


紳士風の男は目に止まらない速さで女に近づくと小柄な体を抱き上げ飛び上がった。


「な、待て!」


「メタファーバーン 風の翼」


音は壱に駆け寄ると共に飛び上がった。雲一つない青空の中で音はこんなことを言った。


「女の子の目を見たかい?」


壱は音の目を見る。


「いいや、それがどうしたんだ。」


風の音がゴーゴーと二人の体を持ち上げている。それに伴って周辺の木々はギシギシと歯ぎしりのように縦横無尽に揺られていた。音は重要なことを話す時の顔つきになり、微かに視線をそらし、少しして壱の方を見たように思えた。


「女の子が笑う少し前に、瞳に絶望の色が見えたんだ。」


「絶望の…色?」


落ち着いた口調で、雨がため池に落ちる時よりも真っ直ぐな声でそう感じた理由を話し始めた。


「うん、あれは虐待を受けていた僕の友達の目によく似ていた。だからあの子もきっと、酷い目にあってるはずだ。」


「そうか…でも、敵なのに!第一、本当にそうかもわからねじゃんか。」


音は固く結ばれた意思を譲る気はなかった。


「それでもだ。」


壱の中に一瞬だけ懐疑の念が伺えたがそれは音のどこまでも真っ直ぐな瞳を見ると同意せざる終えなかった。空から鳥のように地上を観察するが生い茂る木のせいで逃げた二人の姿が見えない。仕方なく地上に降りようとしたその時。


「うあああああ!!!!!!!」


甲高い叫び声が聞こえた。





「あっちだ!」

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