六.《身体は勝手に動き、手で瞼を覆った》
矛盾に気がつき
修正しました。
「リク、大丈夫?」
立ち止まった俺につられてか、ヒビキも止まっているようだ。
眩しさに目が開けられない。
瞼を通してでも、白く見える。
どんだけ眩しいんだ。
うん、何か変化がある時は、前もって言おうか、ヒビキさんよ。
真っ暗なところで直接、目に向けて、しかも急に懐中電灯を照らされたよりもキツイ光度に襲われた気がする。失明はしてないよな?
「いや、少し待ってくれ、眩しすぎて目が開けられない」
「リクは、力持ちかと思ったが、やはり、弱い方なのか?」
「セイ、分からないことは口にしないこと。君は直ぐに口に出すね。頭で留めておくことを練習した方がいい」
「疑問は口に出さねば消えてしまいます」
「そうか」
「そうです」
俺を挟んで会話しないでほしい。
「あれ?」
声とともにヒビキが離れていく気配を感じた。
少し瞼を開く。
涙が視界をぼやかしているが、だいぶんマシになった。何度か瞬きをしていると、正面にヒビキがやって来たのが見えた。
うわぁ、良かったぁ。ちゃんと見えるようになったよ。
「リク、大丈夫?」
小首を傾げ、心配してくるヒビキに、安堵した。
「ああ、見える」
そこは白い部屋だった。
十平米くらいは軽くありそうな広さの部屋の壁は一面真っ白で、先程の雪山を連想させた。
その中で俺たちを迎えるように座る人物に目を引いた。
飾りで彩られたフードを深く被った人物の顔を見ることはできず、僅かに陰に見える口からは若い人物であることが伺えた。
「リク、彼女は大巫女のサカエ。状況を知りたいんだって。食事に同席するけど、いいよね?」
いいよね?って、いいも悪いも、俺には判断出来ないんだが、ヒビキは何故に俺に許可を得ようとする?
「ああ、勿論、大丈夫だ。鬼頭陸です。宜しく、サカエさん」
フードが大きく揺れ、頷いたようだった。
喋れないのか、喋るのが億劫な人なのか。まあ、様子見かな。
左右の二面の壁に向かい合うようにドライフラワーのような花が飾られている。あとは飾り気の全くない部屋だ。
椅子が六脚は並びそうな大きな机には人数分の椅子、四脚が置かれていた。
机の上には木の皿に盛られたサラダと丸いパンのようなものが人数分用意されていた。
「リクはここ。隣にセイが座って」
ヒビキがサカエさんの前の席を引いて、俺をそこに座らせ、セイには俺の右隣の椅子を示すと当の本人はセイの前、サカエさんの左隣に腰を下ろした。
「ひとまず、食事をしてから、リクの聞きたいこととか、僕たちが聞きたいことを話し合おうか」
ニコっと今まで以上に眩しい笑顔を見せたヒビキが手を合わせる。
同時にセイとヒビキが言葉を紡ぐ。
「「いただきます」」
うわ、珍しい。食事の挨拶!いや、待て。俺は小学校の給食の時に否応なく、させられていて、中学からは自主的にすることがなくなった挨拶だが、ヒビキたちは、この挨拶を絶やさずしてきたのか。
呆然としていた俺をサカエさんが見ていた。
「え、あ。いただきます」
その視線が責めているようで、取り繕うように挨拶をした。
それを見た後、両手を合わせたサカエさんに言葉はなく、彼女は小さくお辞儀をして、箸を手にした。