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二四.《後ろを付いて歩く》

 部屋に入ると、ノンナさんが明日の予定を告げてきた。

 朝ごはんはノンナさんが持ってくること、朝ごはんの後に、ナーナさんが着替えを持ってくること。うん、至れり尽せり。

 一礼して、ノンナさんが部屋を出た。

 部屋の明かりはランタンに変えられていて、天井の間接照明は消えている。

 ベッドメイキングはバッチリされていて、寝る前の飲み物もサイドテーブルに置かれている。

 体に巻いた布を布団の上に広げて置く。部屋の中はまだ温かいが明け方になると、冷えてくる。暖房らしきものを見ていないが、どうやって温めているのだろう。

 部屋のセッティングはバッチリだし、灯りも暖房も心配無用。食事も支度しなくてて良いし、お風呂は準備することもない。どこの亭主関白だよ。

 こんな生活してたら、駄目な人間になりそうだ。いや、なる。

 でも、有り難く、準備された飲み物をいただいて、ランタンの明かりを小さく調節してから眠りに着く。



◇◆◇



 白い部屋に立っている。

 壁が白いのか、霧がかっているのか、よく分からないが、周りは白い。

 ガラスのような反射がある。扉らしき物は見えない。

 なんでこんなところに立っているのか、分からないが、もう一つの不明点は、目の前に居る子供だ。

 何故か、子供が座ってこちらを見上げている。


 ボサボサに伸びた黒い髪の隙間から見える目は誰かを思い出させる。まんまるで、綺麗な二重で、印象深い目。

 誰だろ。

 あ、母親だ。よく似てる。

 弟は居ないはずだが、この子はだれだ?

 頭を傾げた俺を見て、子供も頭を傾げた。

 無表情なのに、その仕草だけで可愛い。

 なんだこの可愛いさは!

 そうだ、この子、幼いのに無表情だ。

 多分、ニ、三歳くらいかな。

 どうして、無表情なんだ?

 不思議だと思っている感じでもない。

 本当に、何も感じていないように見える。


 子供の口がぱくぱくしている。


 何か喋っているのか?

 でも、何も聞こえない。

 座って、子供と目線を合わせる。

 こちらも口を開く。



◇◆◇



 目が覚めた。何か夢を見ていた気もするが、覚えていない。なんだか、モヤモヤする。

 間接照明から明かりが、こぼれ落ちている。

 この間接照明は朝がきたら、明かりが灯って、日が暮れたら消えるようだ。部屋は窓も無いし、時計も無いから、一日の変化が分かるのは有難い。

 モヤモヤは残ったままだが、分からないものを気にしても何もならない。気持ちを切り替えるため、身体を動かそう。

 背伸びをして、起き上がり、軽くストレッチをしていると、鈴が鳴った。

「どうぞ」

 入ってきたのは、ノンナさん。朝ごはんを持ってきてくれたようだ。

「おはようございます。本日はナックワとピーヤンの炒め物です。白いものがピーヤンです。どちらで食べられますか?」

 お、もしや、会話のトスができる子なのか?

 ベッドから降りてマントを羽織る。

「おはようございます、ノンナさん。ここの台で食べます」、

 いつも使っている低い机を示して、トレイを受け取ろうと手を出すも、断られる。仕方ない、俺はお客様だ、座ろう。

「失礼致します」

 静かにトレイを置くと、ノンナさんは一礼をして、部屋を出ていった。

 ん、まだ先は長いな。

「いただきます」

 ロシアンルーレットのサラダから箸をつける。

「うへ、にがっ」

 真緑の丸い豆と、赤い葉っぱを食べると、顔を顰めるくらいの苦さだった。

「んじゃ、これは」

 飲み物で口の中をリセット。そう、いつも付いてくるとうもろこし味の飲み物はどんな味もリセットしてくれる優れものだった。

 赤い葉っぱと薄緑の平べったい豆。ん、普通に豆と葉っぱサラダだ。

 意表を突かれたい気もするが、普通もいいかも。

 ナックワとピーヤンの炒め物はどんなかな。

「ピーヤンって、ピーマンではないな。なんだろ、シナチクみたいな見た目だが」

 ここで、気を許すと驚かされるはずだ。まずは、ピーヤンだけ。

「な、何、ピーマン!緑じゃないからピーヤンって名前なの?え、じゃあ、肉の代わりがナックワの青椒肉絲?」

 味付けはまさに中華っぽくて、これでナックワが肉みたいだったら、笑う。

「あ、ナックワは芋だった、でも、美味い」

 この赤紫色の茎みたいなのもナックワなのかな?

「うん、美味い」


 温かいスープを飲んで、一休みしていると、チリンと鳴った。

「はい、どうぞ」

 入って来たのは、ノンナさんと着替えを持ったナーナさん。

 お客様なので、トレイはそのままで立ち上がるだけ。

「おはようございます、ナーナさん。ノンナさん、ご馳走様でした」

 ナーナさんは黙礼をして、ノンナさんは口元を綻ばせて一礼した。

 トレイを持ってノンナさんが部屋を出ると、ナーナさんが正面に座って、頭を下げた。

「お着替えをお手伝いいたします」

 やっぱり、一人で着替えさせてくれないのね。

 いや、分かってた。ナーナさんが抱えた服の山を見て、なんとなく、そうかなと思ってた。

「はい、お願いします」

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