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二二.《部屋を出た》

 久しぶりに一人では無い食事を楽しんだ後は、落ち葉を集め終わったので、軽い運動をしている。

 何故か、サカエさんが見学している。

 寒く無いんだろうか。

 建物の前の広場を何周か走って、転がっている棒切れを振る。もう少し綺麗にしたら、良い獲物になるかな。

「陸は、息が、切れないね」

「まあ、鍛えてますから」

「どうやったら、鍛えられる?」

「、そうですね、体力に見合った鍛え方をしないと、いけないので、人それぞれやり方が違いますね」

 素振りをしながら、サカエさんと会話をしていると、建物からセイが出て来た。

「ツカサ、リク、お部屋に戻られてください。風が出るそうです」

「風が出る?」

 俺の独り言に、サカエさんが手招いた。

「陸、戻ろう。ナーナの天気予報は当たるよ。少ししたら、嵐が来る」

 空を見上げるも、少し曇ってるだけで、風が吹いているようには見えない。

 右手を差し出すサカエさん。

 また、ですか?

「また、だよ?」

 棒切れを右手に持ち、左手をズボンで拭く。

「どうぞ、お姫様」

 サカエさんの右手の下に、左手を添える。

「うむ、苦しゅうない」

 時代劇か?

「くくく、楽しいな」

 楽しいなら良かった。

 サカエさんの手を乗せて、ゆっくりと歩く。

 歩く速度を感じて、速すぎず、遅すぎず。

「陸は上手いね」

「そうですか?」

「うん、私に合わせてくれる」


 部屋までサカエさんを送った後、棒切れを整えたくて、ナーナさんを探した。

 ウロチョロしていると、外の音が大きくなっていた。

 風の音がする。

 厚みのある石壁も、明かり取りで、薄い所があるのだろう。

 ナーナさん天気予報、当たった。凄いな。ん?

「ドームだったよな、嵐が起きるって、どうなってるんだ?」

 赤い光が走った空の形状は、緩やかなカーブを描いていた。

 そういえば、世界は循環しているって言ってたっけ?ヒビキ一人で出来ていることを三人がかりで小さな箱庭を維持するのがやっとだとか、あの時はピンとこなかったけど、よくよく考えてみれば、どうなってんだって話だよな。

「あ、ナーナさん!すみません」

 突き当たりの通路を横切るナーナさんを呼び止める。

「小さなナイフみたいな刃物って無いですか?

これの表面を整えたくて」

 手にしていた棒切れを見せながら、説明するも、ナーナさんの頭はこちらを見ていて動かない。

「後で、お部屋へお持ちします。そろそろ灯りが消えますから、お部屋まで案内いたします」

「え、灯りが消えるの?」

「こちらへ、どうぞ」

 ナーナさんは今通って来たばかりの道を戻って行く。

 結構、ウロチョロしてるんだけど、自分の部屋までの最短ルートを割り出すことが出来ない。今もナーナさんが居なかったら、今歩いて来た通路を戻っていたと思う。

 サカエさんの部屋もイマイチ分からない。さっきもサカエさんの、誘導で、送っていってだけで、一人で辿り着ける自信はない。これからも、一人で訪ねることは無いと思うけど、何かがあった時にサカエさんやセイの部屋まで、一人で辿り着けないのは、問題があるかもな。

 部屋の目印の旗が通路の先に見えた。

 この旗も俺のためだけに、ナーナさんが掛けてくれた。どこも同じに見えるんだから、仕方ないだろ。初めの日に、確信を持って、ナーナさんに頼んだ。辿り着けない自信があります。なので、目印が欲しいですってな。

「ナーナさん、ありがとうございます。目印が見えたので、一人で行けます。灯りが消える前に、ナーナさんも、部屋に戻られてください。ナイフは明日の朝でも大丈夫です。あ、夕飯はどうなります?」

「夕飯までには灯りは、回復すると思います。夕飯は後で持って来ますので。失礼いたします」

 礼をしたナーナさんと別れて、目印の旗に向けて歩き始めた。

 数歩進んだ所で、灯りがジワッと消えていった。

 立ち止まり、暗さに目が慣れるまで待っていると、近くに人の気配がした。

「ナーナさん?」

「お連れします。お手を取ります。失礼いたします」

 右手を取られ、誘導される。

 目が慣れて来たけど、よく見えない。

 ナーナさんの白いフードがジワッと見えてる。が、旗は、見えない。

 ナーナさんは見えてるってことだよね。え、顔隠してるのに?どういうこと?

「こんなことはよくあるんですか?」

「風はたまに。灯りが消えるのは久しぶりです」

 端的な回答。

「ナーナさんは、こんなに暗いのに、見えてるんですか?」

「私は、風の言葉を聞けるので。不自由はしません」

 はい、または、いいえ、でお答え願います。どちらともつかない返答には、困ってしまいます。

 だが、見えてないってことか?

「着きました。お部屋の中は大丈夫でしょうか?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございました」

「失礼いたします」

 今度こそ、ナーナさんが立ち去って行く。

 左手を伸ばせばすぐに布に手が当たった。暖簾のような布をかき分けて、中に入る。

 左側の壁に棒切れを立てかけて靴を脱いだままにして、足の裏に絨毯を感じながら、真っ直ぐ進む。

 自分の物は無いから、初めて来た日から物の配置も変わってない。

 壁に辿り着いたら直ぐ右横にベッドがある。

 手探りでベッドに腰掛ける。

「風の言葉ってなんだ?」

 そういえば、岩のビオトープでも、言ってたな、『土と水、風の言葉で』って。なんなんだ?ドーム内で嵐が起きるのも気になる。

「明日、聞いてみるか」

 横に倒れると、瞼が重く感じた。

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