表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/22

十五.《格好良く決められてしまった。》

「サカエさん、謎だらけです」

「くくく、いいじゃないか、退屈しなくて」

 少し歪んだ笑みを浮かべるサカエさんの言葉は謎だらけ。全く話にならない。仕方ないので、話を戻そう。

「それで、話を戻しますが、神殿でお仕事されてるナーナさんも力があるんですか?」


 ん?サカエさんが、更に悪い笑顔になった。

「神殿に使える者達は選定されない。殆どが口減らしだ。中には力のある子もいる。だが、響樹や巫女たちの側仕えは力のない子でなければいけない。ナーナは力を持たない。それは、こないだの席で分かっているだろ?」

 口減らし。聞き慣れない言葉。だが、意味は分かる。他を生かすために、弱くて使えない者を捨てるってこと。

 普通に食事が出てきてたけど、それは此処が神殿だからなのかもしれないな。

「こないだの席?」

「下手に力があると、眩しいんだよ、我々は」

「あ、そう言ってましたね。つまり、自衛出来ないから近くに居られない。逆に自衛出来るほどの力がある子はいないってことですか?」


「近くに居ないだけで、自衛できる子は居る。それは次代の女神候補だ。自衛と言っても、女神になると、使える力が限られてくるから、眼を瞑ることでしか、自衛は出来ないがね」

「制約、ですか?」

「女神の力は大半が結界の維持に使われる。私や響樹のように、力を抑えるための力は敢えて使わない。こないだのように集まる時は別として」

「因みに今は?」

「抑えてない」

「ナーナさん以外の方が居ないのは」

「眩しいからもあるが、こないだ響樹が言ってただろ?我々を見てはいけないと思っているんだよ」

 ふと、寂しそうに見えた。

「それって、寂しいですね」

 言うと、はっとした顔でサカエさんが俺を見た。

「この三日ほど、俺、殆ど人と関わってなかったんですよ。ナーナさんは質問しても、会話のトスが続かないし。食事も殆ど一人だったし。寂しいなって思ってたんですけど、たった三日で寂しいなって思うのに、サカエさん達はもっと長い間、そうなんですよね。どうにかならないんですか?」

「そうだな、どうにかしようとしたことが無いな。ただ、結界の外の世界をどうにかしたくて、そんなことにまで、気が回らなかった」

 サカエさんがふわっと笑った。

「やっぱり、陸は風だ」

「風?」

「変化をもたらす風。停滞した世界を動かしてくれ」

 何か大事なことをサラッと言われた。

「・・・ひとまず、先に勉強ですよね」

「そうだな」

 サカエさんは賛同してくれたけど、俺は分からないことを後回しにしてみただけだ。

「立ったままも疲れるだろ、部屋へ行こうか」

 サカエさんの言葉にナーナさんが歩き始める。

 その後ろをサカエさんが歩き、促された俺、続いてセイが並ぶ。

 石畳の廊下は幅が広い。五メートル以上はありそう。高さもある。石壁からアーチを描いて形成する天井に間接照明があり、程よい灯りが床まで届いている。

 石造の壁を初めて見た時は、行ったことはないが、写真とかで見たヨーロッパのお城みたいだなと思った。間接照明は違うけど。

 

 廊下の突き当たりにある部屋に入る。入り口に垂れる布を分けて抜けると、石壁の厚さ分の空間があり、その奥にまた布がある。それを抜けると温かい部屋に入った。


「そこで外履きを脱いで。室内履きは右の棚にあるから」

 サカエさんに言われて、入り口直ぐの足元のマットの上で履物を脱ぎ、靴を揃えてサカエさんの靴の横に並べて置いた。意外と冷たく無い石の床に立ち、棚にある履物から大きめの物を選んで履いた。


 部屋には幾つもの椅子やソファがバラバラに置かれていた。

 サカエさんが一つに座るとセイも近くの椅子に座った。俺は、サカエさんの向かい側の椅子に腰を下ろした。


 気づくと、ナーナさんが居ない。


「さて、今から話すことは、女神になった者しか知らないことだ。外では話さないように。陸、いいね?」


「それは、消された記憶のことですか?」


 少し目を見張るとサカエさんは息を吐いた。

 膝の上に肘を置き、組んだ手で額を二、三度押してサカエさんは顔を上げた。

「響樹はどこまで話した?」


 どこまで?ベクトルが分からないな。時間軸?程度?分からないから、ヒビキとした会話を伝えてみる?


 少しの時間、思い出すのに目を瞑り、目覚めてヒビキと話したことを引き出しから取り出して、サカエさんに話した。

 

 そう、あの会話をしてから、まだ三日しか経っていないのに、もう随分と経つような気がする。

 俺が未来に来たと言われたが、まだ信じてはいない。証拠は何も無い。百年生きた?あり得ない超能力を見ても、ヒビキ達が永い時間を生きているとは、信じられなかった。

 信じたところで、何かが起こる訳でも無いが、信じていないことで何かの枷になる気はしている。

 無条件で信じようとする俺と、証拠を求めて足掻く俺がいる。


 証拠が欲しい。


 俺は、信じたい。


「ああ、陸。お前は、そんな明け透けで、本当に、どうしようもないな」


 ん?何が明け透け?


 ヒビキとの会話を話し終わった俺をサカエさんが見つめる。

 あったことを話しただけなのに、何が明け透けなんだ?


「ふふふ、はっ、はあっはっはっはっ、はあ、もう、いじらしくて可愛いねぇ」

 突然に笑い、よく分からない評価をしてくれたサカエさんが立ち上がり、二歩ほどの間隔を一歩で詰めて俺に左手を差し出してきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ