十.《むしろ、嬉しそうだった。》
前話同様、
少し短めです。
それにしても、ヒビキは何歳の時に十三才も年上を好きになったんだ?見た目、少年だから、好きになられた方のサカエさんは迷惑じゃなかったのか?第一、大切な人って言ってるけど、付き合ってるのか?
「おーい、声に出てるよ、リク」
ヒビキの声に我に返った。
「悪い、声に出てたか、で、答えは?」
ヒビキの横から堪え切れない笑いが漏れた。
「面白いねぇ、リク。素直でいいよ。でさ、こっちの質問に答えてよ。リクってどんな漢字?」
漢字に拘る?
「大陸の陸です」
「こんな字だっけ?」
サカエさんが書いたのは『佳』。
うん、惜しいのか?
「いや、それは『けい』ですよ。『陸』はこう」
空中に書いて見せると、サカエさんは嬉しそうに頷いた。
「あー、そうだったか。陸ね、思い出したよ。ありがとう」
「ツカサ」
無表情のヒビキがサカエさんを見ていた。
なんだ?あれだけ表情豊かだったヒビキが表情を見せないなんて。
そんなヒビキを見てサカエさんは微笑んだ。
「大丈夫。思い出せてるよ」
「無理はしないでね」
「ああ、分かってる」
なんだ?サカエさんは病気なのか?そういえば、十年リハビリしてたって言ってたな。そんなに長くかかるなんて、何があったんだろ。聞いたら教えてくれるか?うん、追々、聞ける時が来たら、聞いてみよう。
「まあ、喋ってたら、料理が冷めるから、先に食べてしまおうか」
仕切り直したのは、サカエさんだった。
目の前には料理が増えていた。
緑の鶏肉に、ピンク色の葉っぱと青い実に白いフワフワした物があって、甘い匂いを漂わせている。
隣に置かれた器には真っ赤な液体、スープのようなものがあった。
「やっぱり、鶏肉は緑じゃないよな」
箸で一切れ挟み上げ、ひっくり返したり、しても、緑は変わらない。
「陸は鶏肉は何色だと?」
少し不思議そうな顔で、ヒビキが聞いてきた。
「白。照り焼きになったりすれば、その照りの色になるだろ」
「へえ、白なんだ」
「白ですよね?サカエさん」
「あ!ツカサと喋ったらダメ」
ヒビキが何か言ってる。が、無視だ。
「そうだな、白だよな。懐かしい、白い鶏肉、食べてみたいな。もう、無理だろうな」
「やっぱり、遺伝子から変わってるんですか?」
「そうだね、生態系的に変わりすぎてるから。この肉の本体を見れば、分かるよ。食べて、落ち着いたら、見に行こう」
「そうですね、早く食べましょうか」
何か言いたそうなヒビキを他所に、サカエさんと会話する。優しいお姉さん的な雰囲気で、どこか癒される感じがする。
「そうです。早く、食べて下さい。待ちぼうけです」
意外なところから、クレームが入った。
いつの間に食べていたのか、セイの皿の上には綺麗に何も無くなっていた。
なかなか進まないです。
気長にお付き合いくださいませ。




