九.《誰かが笑った。》
見れば、サカエさんが口元に手を当て、俯向き、肩を震わせていた。
「え、ちょっと」
慌てたようにヒビキがサカエさんに声をかけていた。
「ごめん、もう駄目。耐えられないよ。響樹には悪いけど、傍観者にはなりきれないや」
「えー、約束したよ?」
「ふふ、今度、響樹の言うことを一つ聞いてあげるから、私が喋るのを許して欲しい」
ヒビキが頬を膨らませてサカエさんを睨んで(?)いた。
睨んでいるように見えるけど、なんか違うな。なんだろ?
「な?響樹」
「本当に本当だよ、一つ貸しだからね」
「ああ、一つ貸しだ。で、これも脱いでいいよな?星、手伝って」
ヒビキの反応を確認しているようには見えなかったが、サカエさんは脱ぎたくて堪らなかったのか、さっさと動き始めた。
「あぁ、待ってください。後ろに回りますから」
慌ててセイが席を立ち、 俺の後ろを通ってパタパタと小走りにサカエさんの元へ急いだ。
サカエさんが首の後ろに手を回し、何かをすると、服の前が下がっていった。
そこへセイが飾りの着いたフードの両脇をサカエさんの背後から持った。
それを確認すると、サカエさんは下がった服の裾から手を入れ、服を持ち上げる。
万歳をするように服を持ち上げるサカエさんのタイミングに合わせ、セイがフードを持ち上げた。
現れた白に、目を見張った。
乱れた髪を手櫛で整えながら、セイに「ありがとう」と告げる女性の髪は真っ白だった。
セイも白いが、サカエさんの白はまた違う。
さっきの部屋は暗くて、そこまで分からず、白いと思ったが、明るい部屋に来てセイの髪が薄い金髪であることに気づいた。
でも、サカエさんは本当に、白い。
「ふう、暑かった。空調の整ったところで着るものじゃないね」
そして、此方をサカエさんは紅い瞳で見た。
「改めて、自己紹介をするよ。私は榮司。宜しくリク」
「つかさ?」
「そう、つかさ。司令官の司で、つかさ。リクってどんな漢字?」
「つかさ?」
俺はヒビキを見て、サカエさんを見て、ヒビキを見た。
「おまえの大切な人?」
にこやかに笑ってヒビキが頷いた。
「そう、僕の大切な人」
「えーっ!」
そうか、勝手にお亡くなりになったと思ってたけど、ヒビキは悲しそうにはしてなかった。むしろ、嬉しそうだった。




