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外で言う第二学校は12~15歳が通う。
この期間が終わる頃には、村の本や師に指導を願い続け、結果、もうこの村で学べることがないと言われるほど魔術を学びつくしていた。
竜騎士になる適正試験をうけられる年齢に達したこともあり、村抜けの試験を受けることにした。
村抜けの試験は幼い頃に魔力と記憶を抜かれ孤児院に預けられるのとは違い、村の人々に認められて外へ行くための試験だ。
まず外に興味のある人しか受けないし、受けてもそれこそ村の全ての知識を総なめし、実力でも大人たちに勝たなければならないから、結構厄介であまり受ける人はいない。
この前に受けたのは5年前の人が最後だった気がする。
そんな試験に挑むのだから、前日の夜かなり緊張して寝られないでいた。
「ユエル?寝られないのかしら?……大丈夫よ。だって私の子供だもの」
母が薄くあかりの付いていた私の部屋にハーブティーを入れてきてくれた。
上質な魔力の香りが漂う。
「母上……ありがとうございます。」
「ふふっ、あの人が知ったらなんていうかしらね?」
「ち、父上の事ですか?」
母はにっこりと笑って頷いた。
「父上は、どうして帰ってきてくださらないのでしょう?」
私は父について何も知らない。疑問に思って周りに聞いてはみたけど、誰も答えてくれなかった。母からも父の話は、ほとんど口にされたことがない。
「私のことが嫌いなのでしょうか」
ボソッと口から出た。
「いいえ、それはないわ。」
母ははっきりと言った。
「もう遅いからそれを飲んだら寝なさい。あなたの父様は村の外でしっかりやっているわ。あなたもきっとどこかで会えるわ。」
「父様は、外に……どこかで、会える。」
「えぇ、嘘はないわ。」
目がうっすらと開いた母は続けて小さい頃から聞き慣れた「おやすみなさい」に変わる呪文を紡いで去っていった。
よく考えたら、母以外の家族を知らない。
祖父も祖母も、姉や兄も、もしかしたらいたのかもしれない。
少なくとも、私の後に母が生んだ子供はいないのはわかるのだが。
魔術と竜以外のことにあまり興味が向かない私は、ここで考えることをやめ、ハーブティーを飲み干した。
寝て明日に備えなければならない。
静かに目を閉じた。