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男装竜騎士  作者: 根尾 彼方
15/45

15(メリガン)

番外編を別の連載小説としてのせています。昨日パソコン忘れて、更新できませんでした。申し訳ございませんでした。

 竜騎士試験当日。


 私はグラさんに言われたように歩いて試験会場へ向かう。


 持ち物は、グラさんに渡された提出書類がまとめてあるファイル。

 そして母から渡されてから一度も中身を確認していないカバンだ。


 試験は即日合格発表だから、入学できるよう荷物は全て持っている。


 実は街を歩くのは初めてだ。

 こんなに人がいることがまず驚きで、皆「ながら歩き」であるのに、綺麗に他の人を避けて歩いている。

 魔術の応用かと真似ようとしたが、皆一様に魔術を使えるほど魔術を持っていない。

 特殊な武術か何かかもしれない。今度習おうか……




 私は何度も人にぶつかって「すみません」と言いながらも試験会場に辿り着くことができた。



 会場は人で埋め尽くされていた。


 思わず足を止めて辺りを見回すと、後ろから人がぶつかってきた。


 反射で戦闘態勢を取ってしまったら、ぶつかってきた人がすごい焦りながら謝ってきた


 「ご、ごごご、ごめんんなさいぃぃいいぃ」


 「あ、いえこちらこそ、立ち止まってしまい、申し訳ございませんでした。」


 「あ、あ、いえ、あのその、じゅ、受験生ですか?」


 相変わらずどもっているが、何やら私に質問してきたらしい。

 「はい。そうです。」


 「ぼ、ぼぼぼくもです。」

 「そうですか、受付はどちらかわかりますでしょうか」


 「は、はい。えっと、その向こうです」


 長蛇の列の末にある机を指差した。

 これ、ならばんといけないのか。


 「ぼぼ、ぼくは、れ、列並んでたけど受付目前で、と、トイレが我慢できなくなってしまって、今からもうい、かい、な、並び直すところです」


 なるほど?

 どうやら、多少不運な星の元に生まれてきてしまった人のようだ。


 「お名前をお伺いしても?」


 「え、え、あ、ぼくの名前ですか?」


 いや、他に誰がいるというのだろう。

 「はい。」



 「め、メリガン……です」


 「短くて覚えやすい名前ですね!」

 良かった、覚えやすいと思ったら、周りの人がバッと一斉にこちらを見て私の顔を凝視した。

 そして、その後メリガンのことを心配そうな目で見つめている人が多い。

 中には興味を失ったような表情をして、向き直っている人もいるが。



 「は、はは、だいじょうぶです。嫌味には慣れてま、ます」


 すると、見ていた人たちは列の方向へと向き直った。まだ若干視線が痛いところもあるが。

 きょとんとしてしまった。

 すると、近くで列を整えていた警備中の文字が書かれた腕章をしている人が私に向かって口を開いた。


 「そこの世間知らずの方。ご存知ないのかもしれませんが、短い名前というのは一般的に訳ありであることが多いイメージを待たれます。特に、名が一つだけの場合、家族名がございません。家族名がないということは・・・。」


 腕章をつけた人はメリガンの首に目を一回移してから、「わかりましたか?」と続けた。

 メリガンの首に襟にほぼ隠れているが、どこかの家の家紋が入っている。


 それは、その家の奴隷であることを示す魔術刻印。

 一生をその家に尽すものである証だ。

 逃げようとしたり、主人に反抗的な行動をすると息が苦しくなったり、頭が痛くなったりするらしい。主人のみに許された特権として、命令を聞かせることもできる。身体的な強化も主人を守るためには可能など、その身は自分のものではなく、主人のためにある。


 だからこそ、奴隷を竜騎士にすることで、いざという時に身を守ろうとする貴族は多いらしい。うまくいくことは少なく、竜騎士は国家の兵であり私兵には許されていないので、必要になるのは国が滅ぶ時くらいだと思うが。ただ、奴隷の竜騎士がいるかいないかで、家同士の権力に影響をするらしい。



 「教えていただきありがとうございます。メリガンさん、そのような理由とは知らず、失礼しました。」


 すっと頭を下げる。


 「いいいいいい、いえ。あの、その、小さい頃から慣れてい、いますので大丈夫です。ぼ。僕なんかに謝らなくて大じょ、うぶです」


 またもや焦りながらメリガンさんは私よりも多く頭を下げる。



 「あ、あ、あ、あの、差し支えなければで、いいので、すが、あなた様のお名前を……お教えいただけないで、で、でしょうか」


 「僕の名前は、アシコルア・ユエル・アザゼルシアです。」


 「失礼いたしました。ご主人様の一族の方とは存じ上げませんでした。挨拶遅れましたことお許しください。」


 いきなり、饒舌になったメリガンに驚く。


 「え、え、え、?」

 今度はさっきまでのメリガンが私にうつってしまったようだ。



 「このメリガン、家系図は全て暗記していると自負していたのですが……最近養子になられた方でしょうか?」


 お仕事モード??のメリガンはさっきまでのキャラがどっかにいってしまった。


 「はい、つい先日、養子になりました。」


 「左様ですか、最近は試験勉強のためにご主人様のもとから離れており職務を怠っておりました。重ね重ね無礼をお許しください。」



 あれ、私が思っていた奴隷と違う?

 なんか、やりたくないことを無理やりやらせているのではないの?

 どちらかというと……

 メリガンにとっては誇らしい「職業」のようだ。


 「その、僕はご主人様でもなく、一緒に受ける受験生だから、さっきのメリガンに戻ってくれないかな?」


 私には、バレているぞ。メリガンは自身の魔術で言語中枢活性化させている。

 む、む。別にさっきのままで良いのに。



 「そのようなことは、それにあのような恥ずかしいわたくしを、み、み、みせるわ、わ、?わけには」


 「ごめん、メリガン、魔術うまいね。阻害するのに少し手間取ってしまった」

 呼び捨てしても怒らないだろうし、何より私はこの「人」を気に入った。

 友達というものを初めて作れそうでわくわくする。それに、メリガンの魔術は私はやって来なかったことをやっている。これはとても、興味深い。


 「へへ、へ??そ、そが、阻害、魔術を、お、お使いになるら、れるの、で、ですか?」


 「はい、得意分野です!」

 幻術は基本認識阻害だから、この手の魔術阻害は得意だ。


 「す、す、すすごい、です!」


 目がキラキラしている。



 いろいろとその後も喋っていたら受付の順番がきたので、メリガンにかけていた阻害魔術を解除して、受付を済ませた。


メリガンさんにはツッコミ役を期待してます。ツッコミ役いないと、基本ユエルちゃん大暴走なので。

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お読みいただき有難うございます!
こちらも覗いていただけたら幸いです。完結済みSF風小説です。タイトルをタップすると作品ページへ飛びます。
『不老不死の薬を作った少女』
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