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出発前に男が竜と話しているようだ。
「そうか、相棒大丈夫か?そいつは素人だぞ」
竜は胸を張るように背筋を伸ばす。
「いやいや、あ、相棒浮気か!?」
ブンブンと竜が首を横に振り、そっと頬を男に近づけた。
「あ、お、おう。そうか、そうだよな、じゃぁ、気をつけてな」
今度は竜が縦に首を振る。
一通り会話が終わったのか、男がこちらを見た。
「相棒が送って行ってくれるってよ!俺はここでのんびり相棒の帰りを待つぜ」
「!?竜の背に一人で乗っていいのですか?」
「おい、敬語……まぁいい。あぁ、相棒がいいって言ったからいいぞ。それに相棒のスピードに自身の魔力だけで付いてきたやつだからな、騎乗中の防御魔法も勝手に自分でできるだろ?」
グルルル
ボソッと、こいつ学園で習うことなさそうだと男は漏らすが、少し興奮した竜の声にかき消される。
「そうか、全力で飛んでも多分大丈夫だ。行って来い」
グルルガル
私は、男に向かって一礼して、「早く行こう」というように羽を広げようとする竜に飛び乗った。
すると、竜は一直線に洞窟の外へ向かって走り出し、羽を大きく広げて飛んだ。
竜の上は一言で言って最高だ。
竜に身を任せて飛ぶ。
竜は、遊ぶように羽を閉じて一気に下りたり、くるくる回ったりしている。
私は、先ほど飛ぶために使っていた魔力で竜に加速の魔術をかけてやる。
竜は驚いたように一瞬、目をカッと見開いたが、すぐに楽しそうに速度を上げていく。
振り落とされないための防御魔術は効率の良い式に変換し節約している。
風をきるのはとても楽しく、行きより寄り道をしたようなのにすぐに魔術通路までついてしまった。
すっかり夕日で当たりが綺麗にオレンジに染まる中、私は竜をぎゅっと一回抱きしめるようにした後、その竜から飛び降りた。
行きと同様に周りに気配はなかった。
竜の少し驚いた間抜けな表情が愛しくて、空に向かって微笑んでしまった。
竜は、私が無事魔術通路まで行ったのを確認したのか、大きく一声鳴いてから飛び去っていく。すると、どこからか何かが集まってくる気配がしたので、すぐ魔術通路の中に足を踏み入れた。
この竜結構すごいやつです。(語彙力)