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グラさんが王宮の蔵書をせっせと運んできてくれてかなりの冊数を読み終えた頃、竜騎士の宿舎に行ける日が決まった。
数日後の予定に心を弾ませる。
竜騎士にはいろいろ聞きたいことがある。
だが、竜騎士をこの目で見られる事よりも竜を見られることを楽しみに思う。
竜と竜騎士は常に一緒にいるから、宿舎なら絶対に見ることができるはずだ。
***
それから数日後、竜騎士の宿舎に行ける日を迎えた。
私は、グラさんが運んできてくれる本を読むのと同時に指輪は改良を重ねた。
指輪は最初のデザインからかなり洗練された装いに形が変わっている。
最初は指輪というより、ナックルのようなデザインになってしまっていたのだ。
なんだか、美しくなかったので、母が薬指にしていた指輪を目指してみた。
小さくすることに何度も失敗しながら最終的には、洗練された銀の指輪が出来上がった。
今では私のお気に入りだ。
つける指を母と同じにしてみたら、グラさんに
「その指では結婚していますという意味になりますよ。」
と言われて、つける指に意味があることを知った。
指輪のサイズは創造魔法でぴったり抜けないようにしてくれるサイズに変えられから、他に変えたが問題ない。
竜を見られることにわくわくしながら朝ごはんなどを済まし、グラさんを待つ。
コンコンとノックされ、グラさんが部屋に入ってきた。
「おはようございます。」
私が支度を済ませているのを確認すると、「では、ご案内します」と言ってついてくるように促した。
この部屋に案内されて以来、実は初めて外に出る。
特段制限されていたわけではないが、1日目に会った王妃と関わりたくないな。と思ったので部屋から出ないようにしていた。
食べなくてもいい食事は毎日運んできてもらうのは申し訳なかったのは確かだが。
廊下には上質な絨毯がひかれ、ところどころに大きな絵や村では見たことない大きさの花瓶に花が生けられている。
興味深いと思ってキョロキョロしていたら、グラさんに笑われてしまった。
「こちらが竜騎士宿舎と王宮をつなぐ専用の転送通路です。私は王宮から出ることがないので、ここから先はお一人でお願いします。あちら側で、私の昔なじみが待っています。あなたのお母さんを知っている人ですのでご安心ください。」
私の母を知っているということは、勇者パーティーにいた人のだろう。
竜とともにある竜騎士の宿舎は、王宮から少し離れた場所にあるので、魔術通路を使って道程を短縮している。
魔術通路は、決まった場所と決まった場所をつないでいる。
「わかりました。グラさんありがとうございます。行ってきます」
魔術通路を村で使ったことがなかったので少しドキドキしながら足を踏み出した。