不思議な時間
東條 葵 17歳。
ヒキニート(仮)で、伸びきった髪の毛と度のきついメガネがトレンドマーク。
クラスでは、誰とも話さず……いや、話してくれず非リア充ライフを送っている。笑
そんなおれが、まさか校内一の美少女と繋がりがあったなんて……。
「びっくりだよぉ、大佐が東條君だなんて!笑
オタクなのは見てて分かったけどまさかクラスメートとはね!」
「お、俺もすごく驚いてる…。橘さんがshizuちゃんだったなんて笑」
shizuとは橘さんのSNS上での名前だ。
「クラスの人とかには絶対内緒だよ!?わたし学校ではオタクっていうの隠してるから!笑」
「全然分からなかった!橘さんってオタクとは真逆の世界の人だと思ってたから。」
そんなたわいもない会話を屋上でしていた。
昔からネット上で友達とはいえ、目の前にいるのは校内一の人気者かつ美少女。
ヒキニート(仮)の俺とは無縁の人だ。
「あぁ、なんか不思議な感じ!それに、やっぱり素で話せるってすごく楽しいね!」
そう言う彼女の笑顔がとても素敵だった。
俺も精一杯の笑顔で応えようとしたけど、普段から笑わない俺の顔面の筋肉は動かなかった……笑
「ねぇ、たまにさこうやって屋上で話さない?
今日だけっていうのは、なんか寂しいし笑
どうかな…?」
「え、あ、うん!もちろん!俺なんかでよければ!」
「やったぁ!じゃあ、話したい時SNSでDM送るね!じゃあまたっ!ばいばいっ」
そう言って、橘 静香は屋上から帰っていった。
俺も完全に動揺しきった心を落ち着かせて、
屋上を後にした。
家に帰りついた俺はいつものように、パソコンの前に座り適当にアニメをつけてぼーっとしていた。
「夢なのか?夢じゃないよな……
痛っ、夢じゃないのか。」
つねったほっぺたがうっすら赤くなった。
自然と顔がニヤける。
あんなに学校で楽しかったのは初めてだった。
部活の仲間といる時とはちがう、不思議な感覚。
『次はいつ話せるんだろう……』
そう思いながら、俺はいつの間にか眠っていた。