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私の存在はどこにあるか  作者: 椎名
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17歳の日常

自分の存在の意味とか、そんな当たり前のことにすら一喜一憂する不安定な青春時代。

だけど誰にでもある。誰にでも見つかる自分の場所。時と経験が大人にしていく。

葉月はまだ揺れている。

 私は最近どこにあるか。

 私は誰に必要とされているか。


時々、ふと分からなくなるときがある。歳のせいか、スマホのせいか、

バイトを詰め込みすぎたせいかどうかは分からないけど。

声を大にして言いたいことがある。だけど言えない。

伝えて傷つくあなたの顔が見たくないって卑怯なだけ

言いたいこと言えなくてだんだん無口になって、

それで静かに聴いてるふりをするんだ。何にも聞いてないのに、うそ。

その話は、もう季節をまたいで来た数だけ聞いたよ。

 いつだって人は自分しか見ていない そんな風に斜めから

ものを見るようになった自分が嫌いだった。

嫌いな人がいつも朝から私を必要としてくれる。

私は嫌いなくせして、あなたと過ごす。あなたの考え方、嫌いな食べ物、

あなたの母親、あなたの笑い顔、全部イライラしてくるし、

なんで、友達が多い、誰とでも仲良くできるだなんて嘘ついて

面白くない場所でだって笑えるのか。そんな貼り付けの作り笑い

こっちに向けないでよ。って3分に1回思ってるよ。

できるから任せて、の強がる顔も嫌いなの。

私は、その辺で箸が転げても面白い女子高生とは雲泥の差がつくほどの

人生を歩いてきた。人は嫌われて自分の居場所がなくならない為に、

日々無理をする。無理をして、自分の居場所を自分で壊してく。

そんな人生をまじかで見てきたんだ。分かるよ。

いつかその作り笑い張りついっちゃて、いっぱいになるんだよ。

だからお願だから、私の前で苦しいのに笑うのやめてよ。って言ってる私は

まだ何も世の中を知らない。うぶでダサくて笑えるくらい普通の女子高生。

十八歳って書いてもいいのに、あえて女子高生と書いてしまうところに

私の「女子高生」という肩書へのプライドが見受けられる。

何もうまくいかない。

なぜ、父は私とご飯を食べるときでもゲームをしているのだろうか。

いつかの昼に母がチャーハンを作った。父は片手にゲームを抱え

味がおいしいとか食感がまずいとか、何も言わず黙々と器用に

両手を動かした。私から見れば、最近になってはそれが当たり前なほど

日常の光景だったけど母は違った。

やめてほしい。と切実な思いが積もりに積もっていたし、

その注意すら何回も言っていたからこそ、カンカン照りの日に

「やめてよ。それ見ていて嫌な気分になるの。」と。

皿を飛ばして、言い訳をした父は私にとってはとっくの昔から

ただの同居人だった。

だけど、だけど、そんな風に思っていたはずなのに

父の前から滑って行った三口ほど減った皿が残ったことは

思ったよりも私の胸に響いていることを

父は人としてわかってくれただろうか。

私は言い争う二人を前に、皿に水滴が落ちてのどが詰まるのも

構わずに食べ続けた。食べ続けた。

父が残したそれにラップをかぶせたのは私だった。

捨ててしまうことが、母を傷つけると思っていたから。

私が「おいしい」と笑うことが母を喜ばせることだと信じていたから。

信じたかっただけなのかも。

テレビでショックな情報を見た。

「人が一番に悲しいことは配偶者の死。」ということ。

子供の死よりも大きなストレスを受けると。

たかが情報番組で流れたランキングだったけど、

母は私より父のほうが大きな存在なんだと思ったとき

急に私の居場所が消えたような気がした。

ここだけは絶対、私が絶対だとおもって、努力をしてきた分応えた。

それでも私だけが毎日、静かな食卓で一生懸命に話題を

家族に回してはどうでもいいような話をするのは

ひどく滑稽だろう。だけど、こんな話は誰も聞いてない。

聞いてない。私の居場所はどこにある。

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