なんでなの?
夜月の涙。
わたしと彼の休みが合った日、初めて出かけることになった。これをデートと言っていいか分からないけど、駅で待ち合わせしてそこで会う……と言う流れ。
前日――
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「美月、明日休み?」
「う、うん一応…」
「じゃあ、昼前の11時に水道橋な。西口の改札外で待っててくれ」
「え、あ……はい」
「じゃ、明日な!」
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急に言われて、急にやり取り。そのまま、明日のことが決まった感じ……。断る理由なんてないけど、唐突に言われた方が迷うことなく、決まるのかもしれない。
遊園地……と言うか、あそこはアトラクションがメインのはず。もちろん、1人でなんて行かないけど……そう考えたら、これはデートと言ってもいいのかもしれない。
西口改札外――
「美月、悪い! 遅れた」
「別にいいけど……」
「じゃ、ここから歩き。5分で着くから」
彼とわたしは目的の場所へ向かって歩き出す。たった数分の距離を一緒に歩くことが、何だか楽しい。
「で、だ……美月、何する?」
「決めてないの?」
「俺は現地派。来てから決める。美月、どうする?」
「……拓斗に付いて行くけど」
「そうか。うーん……じゃ、とりあえず地下行くか」
って感じで……行き当たりばったりなデート。そんなものかな。仕事してる彼はそんなにネットとか見なさそうだし。かと言ってスマホ見ながら色々決めたりするかと言えば……らしくない気がする。
それなりに楽しめた。わたしは付いて行ってるだけだから、不満も何もない。一緒にいるだけでいい。
夜――
さすがに夜向けに、乗るのを決めて来たらしく……わたしと彼は定番の観覧車に乗り込んだ。観覧車の中にカラオケとか初めてだったけど、それなり。
気付いたら、月が目の前に見えてて……そして――
「なぁ……」
「……ん……やっ」
キスくらいでなんで逃げたんだろう……わたし、どうされたかったの? 自然にしてくれて嬉しいはずなのに――
「……嫌だったか?」
「わたし、まだ……こういうの……」
そんなつもりも無かったし、もちろん、予想はしていたけど……こういう空間でしかも月が見えてる時に、何だか悲しくなった。嫌いでもないし、好き……かなんて、まだだけど……あー涙が出ちゃったな。
「ご、ごめん……」
「わたしこそ、なんか……ごめん」
キスだけなら――なんて、甘いのかな。んー……恋ってこうじゃない。なんて、どこかのわたしが言ってる。いくら何でも早すぎる……これも遅れてるの? よく、分からないな。なんか、ホント、嫌だ。
わたしはわたしが嫌になる――