逆に彼は
はにかむ笑顔を見せて来る。
「おー、美月、こっちだ」
「もう、なに? ……え」
「どうよ? 俺の彼女の美月だ!」
「おぉ! 可愛いな」「マジかよ……いつの間に」
拓斗から珍しく呼び出されて、ファミレスに入ってすぐにわたしは目が点になった。
「(え? 誰なの?)」
「(あぁ、俺のダチだ。いやーついつい美月のことを喋ってさ。そしたら顔が見たいって言うから)」
何で? わたしは女友達というか、知り合いには見られたくなくて必死になっているのにどうして?
「美月さん、歳いくつなの?」
「バカか? 俺と同い年っつっただろ?」
んーー……何だろ。よく分からないけど、わたしと違って拓斗は彼女を見せたい人なんだ。もちろん、悪気なんてないだろうし、むしろ自慢してる? そんな自慢出来る程じゃないのに……
「なぁ、何飲む? 何でも頼んでいいよ」
「じゃ、じゃあ、ラテ……」
「おけ。待っててな」
「で、美月さんは奴のどこが気に入ったの?」「いいよなぁ。俺らにも誰か紹介してください!」
「え、あ、あの……」
「何言ってんだお前ら……美月は俺だから付き合ってんだよ。なぁ?」
「……」
何て言えばいいの? こういうのって、他の人に”答え”を言うものなの……?
「悪ぃ……困らせるつもりないから。ただ、俺は嬉しくてさ。美月が俺と付き合ってんだぜ? 何か、いいなって勝手に思ったんだ。ははっ……悪ぃ」
その笑顔、ズルくない? 何となく流れで恋人になったのに、嬉しかった? そうなんだ……
「ううん、平気」
「お、おぉ……ありがとな」
照れて横を向いたり、時折見せる笑顔……どうして? 分からない……彼の気持ちが分からない。
「ね、ねえ…」
「あ、ごめん……そろそろ行くよ。この後、現場変わるからさ~近くで会いたかっただけなんだ」
「美月さん、ごめんねー」「また一緒にご飯どーすか?」
これの為だけ? この時間の為だけに彼は友達に、わたしを紹介したの? ど、どうして……
わたしとは逆なんだね。わたしはあなたを見せたくないし、紹介もしたくないのに。
だって、取られたくないから――