放っておいて
教える必要、ある?
拓斗には女友達はあまりいないなんて、言ったけど……いないわけじゃない。全くいなかったらそれこそ、孤独死しそう。
専門に通ってて、もちろん仲のいい友達は何人かいるけど、必要以上に仲良くすることをわたしは避けてる。当然だけど、彼氏の話とか誰と誰が……なんて、話で盛り上がることもある。
でもわたしは、彼氏のことを教えるとかそういうの好きじゃない。共有? それは必要なの……?
みんながみんな、そうじゃないけど……何故か分からないけど、「いいなー」とか、「どんな人なの?」なんて、聞いてくる子は何だか疑う。
「ねね、サーヤは彼のどこが好きなの?」
「特にないけど」
「そんなわけないじゃん! どこかイケてる所があったから付き合ってるんでしょ?」
「今はまだ、分からないし」
「えーつまんない。じゃあさ、私に彼、紹介してよ! ね、約束!」
何で紹介しなきゃいけないの? 勝手に約束しないでよ。わたしだってまだ、分かってないのに……
今は、拓斗と会って話をして……それだけのことなのに、何を紹介するの? 彼をどう、するの?
※
「ねえ、彼に私のことゆってくれた?」
「ううん……」
「何で? あ、もしかして……取られるとか思ってんの? あはは~そんなわけないじゃん!」
じゃあ、いいじゃない。興味持たないでいいよ……。紹介なんて出来ないし。そこまで近付かないで。
何か、嫌だ。わたしにしつこく約束しようとするのは、同期入学で席が隣になったけど今の今まで、話しかけて来なかった久東千沙。
わたしに最近、彼氏が出来た。それがどこからか伝わって、彼女は声をかけてくるようになった。
「大丈夫だし。いくら何でも、ヒトの男に手を出さないし~付き合い初めって手強いしさ」
「それ、どういう……」
「あ、ごめーん、約束あったんだ。またね~」
勝手すぎる。今の言葉はどう聞いても、それをやろうとしているとしか聞こえなかったけど。
彼女はわたしの友達? なんか、違う。ねえ、彼氏のコト……教える必要、ある?