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恋を……してもいいですか?  作者: 遥 かずら
付き合い初め
6/60

ぎゅっとなる気持ち

                手が触れただけ


 別に、そこまで意識することでもないけど、彼と付き合いを始めてからまだ一度も、触れてない。

 昔の人たちみたいに結婚するまでは駄目だとか、純潔を守るとか……そんなんじゃないし。


 ただ、触れなくても話は出来るし、恋人にもなれたわけで。なのに……それなのに、寂しさを感じている。別に、スッと伸ばせばいいだけのことだし、難しくないのに。どうしてそれが出来ないのだろう……


「なぁ、美月みづきのウチって、親、厳しかったか?」


「ううん、普通」


「じゃあさ、休みの日に遊び行かねえ?」


「どこに?」


「そうだな~無難に、テーマパークってのはどうよ? コースターとか絶叫系とか」


「い、いいけど」


 彼、拓斗たくとと付き合い始めてから、未だにどこかへ遊びに行ったことが無い。彼は仕事してるし、わたしは専門に通ってるからで、都合とかが合わないって言うのもあるからだ。


 彼がわたしの親のことを聞いたのは、一応・・、夜遅くまで一緒にいていいかどうかを確かめたかったのだろう。


「おっと、じゃあ仕事に戻る。じゃあ、またな」


「う、うん。また……」


 わたしと彼は最近、近所のコンビニで出会っている。彼の現場がコンビニ近くってこともあって、連絡してコンビニに来るようにしていた。彼に会うためだけに。


 そして、今日もまた、コンビニで話をする為だけに彼と会う。


「美月はさ、誰か友達とかと遊ばねえの?」


「どうして?」


「俺とばかり会ってるだろ。だから、心配になった」


「い、いるけど、仲良しの子はいない……別にそれが普通だし」


「ガキの頃ってもっと友達いたんじゃね? 今は俺だけ……とか? まさかな」


「拓斗は友達、じゃなくて……彼氏、でしょ?」


「そうだけど、友達以上だから友達でもあるだろ? だからほら」


「……何?」


 拓斗がわたしに手を差し出してきた。どういう意味?


「握手だよ、握手」


「あ、うん」


 笑顔を見せながら、彼はわたしと握手をした。こうやって時おり歯を見せながら笑う彼のことが、愛おしく感じる時がある。それに……


「美月の手、ひんやりしてるのな。あぁ、アレだ! 心が温かい……だったか?」


「何それ……そんなんじゃない」


「いや、俺は昔の人のこと、信じる。美月はそういう女だしな。じゃあな!」


「あっ……」


 握手を交わしていた彼の手は離れ、彼は仕事へ戻って行った。その場に一人残されたわたしは――

 胸が……ううん、心臓がぎゅっとしたまま、この場から動けずにいた。


 手に……手に触れただけなのに、どうしてこんなにも胸がぎゅっとするの……?

 わたしって、こんなに免疫無いのかな……。それとも、拓斗のことを好きになり始めている?


 日常、それこそコンビニのレジで店員と手が触れ合うことはあるのに、どうしてだろう……彼、拓斗と握手して手が触れただけなのに、こんなにも彼と離れがたく感じてしまうなんて。


 手と手が触れただけなのに――

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