佐倉恵の決意
彼の告白とけじめ
「うぅっ寒いっすね~。美月さん、体の調子は大丈夫?」
「はい、おかげさまで回復しました。ありがとうございます、二谷さん」
数日ほど体調不良ということで休んでいたわたしはすっかりと回復していつも通りにお店に出ていた。とは言え、もう季節は冬であと数週間もすればクリスマスになってしまうところまで来ていた。
珈琲店で彼と彼女の出来事を目撃して以来、わたしはまだ、佐倉君と話を交わしていない。気まずいわけではないけど、今はもう少し様子を見ようと思っていたからだ。
わたしの気持ちはもう迷うことなく決まっていて、後は機会を待つだけだった。もちろん、上手くいく保証もないし、何よりも彼が好きな人が誰なのかもわたしには分かってない。だけど、今までぐだぐだと悩んで迷っていたわたしは佐倉君の元カノがわざと見せてくれたキスシーンを悔しがることなく、むしろ決意を決めさせてくれたんじゃないかとさえ思い、そのことに感謝すらしていた。
今日はシフト上、佐倉君は休みで出て来ていないけど前と違って、不安に思うことも無くなっていた。それに気付いたのか、カンナさんや久留美さんたちが話しかけて来た。
「美月ちゃん、すっきりした表情だけど何かあったの?」
「もう決めたんでしょ? 美月さん」
「はい。わたし、もう迷うのやめたんです。もうすぐ二十歳になっちゃいますしね……そういう意味でもやばいですから」
「12月が誕生日なの? え、何日?」
「あ、あはは……そ、それが、25日なんです……」
「惜しいね! 24日じゃないんだ? じゃあ、その日までに彼氏にしとかないとって感じ?」
「いえ、そんな無理です。それはさすがに……」
「美月さん、相手はあいつでしょ? 最近話をしてないみたいだけど、それでも言うの?」
「そう、ですね。それが最後のチャンスかなぁなんて……あ、もちろん最後って言うのは」
「うん、知ってるよ。あっという間だしね~」
「はい」
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「マキ先輩、俺ですけど。返事ください」
「へ? 珍しいね。あなたが私にラインとかまだ消してなかったんだ? で、何?」
「あの、無理を承知で彼女と会いたいんですけど、連絡取れますか?」
「……でもあの子はもう……それでも諦めてなかったんだ?」
「そうですね。先輩たちが卒業していっても、俺はやっぱり未練が残ってるので……」
「結果が分かっていても”告白”するってこと?」
「――はい」
「……それはあなたなりのけじめをつけて次に向けるって意味で合ってる?」
「はい、合ってます」
「オーケー。じゃあ、明日……あの子がいる前で”告白”するってことでいいよね? それであの子がどう思うかは想像出来るけど、たぶんもう大丈夫なんじゃないかなと私は思ってるし」
「構いません」
「分かったわ。じゃあ、彼女をあなたとあの子がいるお店にもう一度、呼ぶから、けじめつけて」
「……ありがとうございます」
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あの人が在学中に告白が出来なかった事が俺の未練になっていた。それを、あの子がいる前で見せることになるけど、俺は……けじめをつけなければ進めない。結果が見えていてもきちんと”告白”をしたい――