美月の答え
美月の答え
駅前の珈琲店――
店内に入り、外が見える窓側でマキが手を振ってわたしを出迎えていてくれた。夜のこの時間にカフェに入ることが無かったけど、会社帰りの人とか学生が軒並み多く座っていた。
「サーヤ、待ってたよ」
「うん、待たせた?」
「ううん、私もさっき来たばかり。てゆうか、人多いね。時間ミスったかな? でも座れたからいいよね」
「そうだね。何飲むの?」
「ノーマルなコーヒーでいいでしょ? もう頼んだからそのうち来るでしょ」
「ありがと」
少しして、店員がコーヒーを運んできてひと息ついたところで、マキは話を切りだした。
「サーヤ、私はあなたと友達になって数か月経って、そんな短い間に色々あったよね。それこそ共有したアレとかソレとか。あ、別に悪いこと言うわけじゃ無いよ? それでね、あなたという子が何となく分かって来たんだけど、はっきり言っていい?」
「う、うん」
「拓斗が初恋では無かったんでしょ? 合ってる?」
「うん。初恋じゃなかった……けど、あんなにはっきり告白とかされてデートとかは初めてだった……」
「なるほどね。まぁ、それはそれとして終わったことだからいいんだ。これからさ、サーヤはいつまでも恋に憧れたままどうしたいの?」
「……え」
「キツイかもだけど、はっきりさせて欲しいんだ。これまであまり男子と接したことないのは見てて分かるんだけど、サーヤはそのことだけに満足してるんじゃないかなって思ったの。恋したいのは分かるよ? 私もさ、手が触れたらドキドキするし、抱き締められたらそのまま……って思うし、それは理想じゃなくて現実ね。詳しくは言わないけど、拓斗はソレを含めてサーヤを好きになってたんだよね。それは気付いた?」
「そ、それは……2回目のデートで何となく分かったけど……でも、わたしはそんなことは」
「でしょ? 私は友達の月渚がそういうふわふわした女の子だったから、恋に憧れを持つのは分かるんだ。あの子、今は彼氏いるけど男子恐怖症だったんだ。信じられる? 下手するとサーヤよりも理想持ちすぎてた子だった。でも、彼氏出来たよ? だからさ、サーヤはどうなりたいのかなって知りたいんだよね。今、19なんでしょ? てか、もうすぐ誕生日だよね」
「……マキ」
「怒ってるわけじゃ無いよ? でもなんかこう……あなたの心が分からなくてさ、心配だから」
そうだよね。もうすぐ12月になろうとしてるのに、何だかずっと停滞したまま冬になってすぐに二十歳になってしまうんだよね。わたし、どうしたいんだろ……ううん、もう心は決めてる。
「マキ。わたし、好きなの……彼と付き合いたい。だけど、どうすればいいのか分からないの……」
「彼ってのはわたしも知ってるあいつで合ってるよね? その気持ちになったのは初めて?」
「うん……最初は最悪な印象しかなかったけど、ダイキから守ってもらった時から好きになってたの。なのに、どうして元カノとか出てくるのかなって……」
「あぁ……ソレね。まぁ、それはあいつ次第だけど。でもま、サーヤの気持ちがはっきり分かったから良かった。私はあなたの口からソレが聞きたかったんだ。そうじゃないと協力しようがないじゃん? まぁ、しょうがないけど」
「わたし、彼に告白……する」
「決めたんだ? それじゃあ、私はサーヤの為に何とかするしかないな~いや、何とかしてあげる! とりあえず、もう少し待てる?」
「え?」
「あいつはあいつで片付けないといけない問題があるんだよね。元カノの……」
そっか。彼は彼であるよね……でもこれでわたしは決心がついた。マキに言われなくてもいつか言おうと思っていたけど、いつかではダメなんだよね。
マキが友達で良かった……。気持ちが落ち着いたところで、わたしはふと外を眺めていた。そして――