彼と彼女たちの答え
彼と彼女の答え
「サーヤ、どうしたの? あれ、今日バイトは?」
「う、うん、具合悪いから休んでるの」
この先どうすればいいのか分からない。こんなこと頼れるのは友達しかいないわたしは、マキに連絡をして、わたしの家に来てもらっていた。
「それでその元カノが店にも来るようになって、わたし……負けたくなくて」
「うん……なるほどね」
「わたし、どうすればいいのか分からなくて……」
「サーヤは考えすぎなんだよね。月渚がお店に来た時からてっきり、佐倉と上手く行くもんだと思ってたのに、何でそんなことになってるんだか……」
「……ん」
「あのさ、佐倉がとりあえず芝居で恋人のふりをしてって言った時は嬉しかった?」
「嬉しかったけど、何となくその場だけで終わらせたくなくてそれで……」
「ああ、うん。オーケー……うーん……」
いつまでもこんなことをしていても恋が進みそうにないのは分かってるつもりなんだけど、わたしはその覚悟がない。その辺をマキは考えているみたいで、何度も首を傾げていた。
「サーヤ、体は平気なんでしょ? わたし一回帰るから19時くらいに駅前の珈琲店で話しよ?」
「う、うん」
※
「佐倉くん、美月さんって今日も休みなの?」
「そうみたいですけど、どうしたんですか? カンナさん……」
「あんたなんか言ったんでしょ? 世話しなさいよって言ったのに、そこから休み出したんだから何か言ったとしか思えないんだけど?」
「確かに言いましたけど、それが原因で休んでるとかってそれは単なるこじつけじゃ?」
「やっぱりそうなんじゃん。……で、何を言ったわけ?」
「芝居をやめようって言っただけですよ……」
「芝居……それって恋人の? それだけじゃない気がするけど」
「いや、関係ないと思いますよ。じゃ、そろそろ戻ります」
休憩を終えてホールに出ると、アイリが来ていて俺を手招きで呼んでいる。正直、相手するのも面倒だけど、思えばコイツのせいで美月さんとおかしなことになってる気がする。そう思った俺はコイツが何を考えているのか聞いてみようと思って近付いた。
「おい、アイリ……」
「恵、何時にあがるの?」
「18時だけど。何か用?」
「特にないけど、話がしたいんだよねー。ね、いい?」
「……いいけど」
「じゃあ、駅前の珈琲店に19時に来て。じゃあね」
相変わらず自分勝手な女だ。何を話すのか知らないけど、きちんと言わないと駄目だな。俺は仕事を終え、駅前の珈琲店に向かうことにした――