美月の恋敵
彼の気持ち
お疲れ様でしたー
「おつかれ。ねえ、佐倉くんこれから予定ある?」
「いや、無いですけど……何ですか?」
「じゃ、これからウチらとファーストフードに付き合ってくれる?」
「えー……」
「キミに拒否権は無いから黙って付いて来る」
「はぁ……わかりましたよ」
最近、美月さんとシフトが合わないせいか全く話をすることが無くなった。別に意図的に外してるわけじゃなくて、出戻りの俺は店長からある程度のことを任されているって言うのがあって、他の人よりもシフト多めに入ってるって言うのが正直なところだった。
それを知らない美月さんは恐らく、俺が避けているとか思っていそうだけど予想通り、ホールの先輩方から声がかかったってことは、美月さん絡みなんだろうな。
特にカンナさんは美月さんと俺との事をやたらと気にしてるし、敵に回すと面倒すぎる先輩でもある。ぶっちゃけ、付き合っているわけでもないのに外野からあれこれ言われるのは好きじゃない。
※
「佐倉くんさー、美月さんのことどう思ってるの?」
「何です? と言うか、それはどういう意味で聞いてるんですか? カンナさん」
「勿論、好きとか嫌いとかってことだけど」
「私もそれ、気になるー。ふたりが喧嘩してた時もハラハラしてたけど、今は何も起こってないからどうなったのか気になってた」
「嫌いじゃないです」
「じゃあ、好きなんだ?」
「てか、それって誘導尋問じゃないですか! それに先輩たちに言う意味あるんですか?」
嫌なんだよな。別に俺が彼女のコトをどう思ってようが、ハッキリ言って部外者の人たちに言う意味がない。同じバイトだからとかで公にしなきゃいけない風になってるのがマジで嫌になる。
「意味はまぁ、無いけど……私らはふたりを見てたから気にはなってて、仲悪いのは見てて嫌な気分になるじゃん? それよりは仲がいい……普通の状態ならその方が仕事しやすいでしょ?」
「……何か相談でもされたんですか?」
「んーそ、そうだね。何で最近さ、彼女とシフト合わないの? もしかして避けてる?」
あぁ、やはりそういうことか。そんなことだろうと思った。シフト見てれば誰だってそこに行きつくか。
「別に避けてるわけじゃ無いです」
「ふぅん……じゃあ、どうして?」
「それは……」
何て言えばいいんだ? ここで先輩たちに言っていいことなのか。でもこれはまだ公表することでは……
「佐倉君……わたしも知りたい、です」
カンナさん、久留美さんに呼ばれていたわたしは、佐倉君が答えを言いそうなタイミングを見計らって声をかけようと心に決めて、一足先にお店で待っていた。
「美月さん……来てたんだ」
「う、うん。ごめんなさい」
「いや、謝らなくてもいいけど」
美月さんも来ていたならもう言うしかないみたいだな。彼女に嘘を言っても悲しませるだけだし、俺もさすがに自分を偽りたくないって思ってるしな。
「俺のシフトが美月さんと合わないのは――」
「あれ~? 恵? え、嘘……こんなとこで会えるなんて思わなかったんだけど~」
「お前……愛理?」
「……佐倉君、その人……誰?」
佐倉君がまた言いかけた時、また言葉を遮られてしまった。どうしてそうなるの――