友達の言葉
友達の言葉
------------------------------------------------
「マキ、ちょっといい?」
「ん~? どうしたの?」
「相談したいことあるんだけど……」
「それって、結構深刻なコトだったりする?」
「……うん、たぶん」
「ん、おっけ。じゃあ、どこで会う?」
「わたしの家でいい?」
「おけ。じゃあ今から行くよ休みなんでしょ?」
「うん、待ってる」
------------------------------------------------
こういうもやもやした気持ちの時に頼れる存在と言うと、わたしにはマキくらいしかいない。友達の少なさはここにきて致命的になってるかもしれない。
「サーヤ~来たよ! と言うか、家に入るの初めてかも。隣のカレの家の中はあるけどさ~あは……」
「そうだね、はは……」
「ん、じゃあお邪魔するね」
顔色で悟ったのか、マキは冗談を早々に切り上げてわたしの部屋へ足を踏み入れた。そういえば何だかんだで、誰かを家の中へ呼ぶのは初めてかもしれない。
「おー、片付いてて綺麗にしてんじゃん! さすがサーヤだね」
「――そんなことないよ」
「サーヤは誰が好き……というか、気になってる?」
「……え」
「呼び出した理由ってソレのことでしょ?」
「昨日、いつも通りに佐倉君と一緒に帰ってたの。だけど、突然、銀木さんと出会って、それで……あの」
「へ? 佐倉と一緒にいつも通り帰ってる? そ、そうだったの!? そんな関係だったんだ……じゃあ、あながち月渚の目は間違いじゃなかったんだ。で、銀木がそれを壊したってことで合ってる?」
「待って、佐倉君とはそういう関係にはなってなくて、井塚さんとのことがあってから一緒に帰ってもらってるだけで……好きとかそういうことは何も……」
「うーーん……」
なんか間違ったこと言ったかな。いつにも増してマキを悩ませてしまった。
「マ、マキ……? えっと」
「サーヤの好きな人は?」
「え」
「だから~好きなのはどっち? はっきりしないと怒るよ!」
「好き……は、まだ分からないけど、一緒にいてドキドキするのは佐倉君……」
「何だ、言えるじゃん……じゃあ、由宇とはそういう関係にならないしなれないってことで間違いない? 誓って言える?」
「う、うん……」
「もう~~~~~!! それならそうと言ってよ。サーヤの悪い所はそこだってば! そりゃさ、拓斗とダイキくんとあんなことがあったから怖がるのは分からないでもないけど、それとこれとはもう違うんだよ? 今の佐倉は、現場系の彼らとはそもそもタイプが違うし比べられないよ。サーヤはいつまでも引きずりすぎ! 駄目だってそんなんじゃ」
「ご、ごめん」
「そんな怒ってないけどさ、佐倉が言う通りサーヤは思わせぶりすぎる所があるよ? だから勘違いが過ぎて、会いに来る男がいるわけ。どっちの優しさも受け取るとかそれは駄目だよ! マジで恋をしたいんだったら、その人だけにしてればいい。簡単でしょ?」
「あ、ありがとマキ……。そ、そう言えば拓斗とは上手くいってる?」
「えっ? あーあははは……うん、別れた」
「ええっ!? な、何で……」
「何でって、会わなくなって合わなくなったから。それだけ」
「そ、そんな……」
「いや、簡単じゃん。サーヤは私よりも年下なのに結構うじうじしてるみたいだけど、そんなもんだよ。サーヤだって拓斗とは割とあっさり別れたでしょ? だから、そんなもん」
「今は?」
「今は別に~何もないけど。まぁ、とにかくさ、サーヤも自分を持って返事してみたら? 意外と簡単かもよ? 指先が触れてドキドキするのは分かるけどね~」
「うん、ありがとマキ」
「いいって! こんなことくらいいつでも聞くし」
性格の問題もあるけれど、マキが友達で良かった。そう思えた。明日また彼と話をしてそれからかな――