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そうじゃないわたし。
会いたい時に会えない。
黒野拓斗と、わたし美月紗綾は付き合うことになった。
わたしたちは好き同士で付き合いを始めたわけじゃ無い。何となくの流れに従ったまで――
都内の専門に通うわたしは、親しい友達がいない。恋バナの時だけは、話をする程度。
でもそんなものだと思う。高校とかと違って、通う年数なんかは個人によるものだし、途中でやめるかもしれないから。わたしのカレ、拓斗は、同い年だけどすでに、働いている。
自分から告白して来たくせに、その日、付き合いを始めた日から、わたしとカレは会っていない。
会話はほとんどスマホのみ。仕事をしているカレとそうじゃないわたし。
「忙しいの?」
「まぁな。美月は専門に行ってるんだろ? 頑張れよ」
世間の恋人はもっと、やり取りをしているんじゃないの? お早うの挨拶も、おやすみの言葉も、わたしとカレには存在していない。こんなやり取りが繰り返されて、それでどうして好きになれるの……
わたしは、恋がしたいのに――