揺れ動く……
久しぶりの連絡
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「よぉ! 元気か?」
「え、あ、うん。なに、どうしたの?」
「マキから聞いたけど、いい出会いがあったみたいだな?」
「と、友達だけど……」
「まぁ、何にしてもその人なら俺も安心出来る。マキの幼馴染ってだけでも安心だ!」
「それで、何か用があって連絡してきたんでしょ?」
「あ、そうだった。美月、次の休みは?」
「まだシフト見てないから分からないけど……何で?」
「休みの日、話したいんだよ。あ、マキもいるよ。その芸人さんも一緒だ」
「へ、へぇ……そ、それならいいけど」
「よし、じゃあ……シフト見たらすぐに返信してくれ。じゃあまたな!」
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いつも通りだけど突発的に連絡して来る男、それが元カレの拓斗。元カレで別れたとはいえ、家が隣だし、友達のマキの今カレが拓斗なだけに連絡を断つことは出来なかった。
元々、付き合う? じゃあそうする。みたいな流れでお試し的なこともあったし、知らな過ぎたわたしが原因みたいなものだったし、拓斗が悪いわけでもないからそうならなかったけど、今思えばドキドキの感覚は拓斗から学んだようなものなのかな。
今は特に好きな人はいなくてでも、友達が出来たし、バイトの人とも打ち解けて来たのはわたしにとってもいい傾向かもしれない。全てがそうじゃないけど、身近すぎた関係は上手くいかないのかもしれない。
「美月さん、送るけど……何か忘れ物でも?」
「あ、すみません……次のシフト見たいんですけど、まだ出てないですか?」
「いや、出来てるはずだけど、ちと待って。コピー持ってくるから」
「ご、ごめんなさい」
「いちいち謝らなくていいから」
ああ、駄目だな。何かすぐに怒らせてしまう。佐倉さんはわたしのそういう所が嫌いなのかな?
「はい、持ってきた」
「ありがとうございます」
「それとさ、別にそこまで敬語じゃなくていいよ。年上って言ったって、そんなはなれてるわけでもないんだしさ。何かこっちまで気を使う……」
「あ、はい。すみません、ちょっとらいんしていいですか?」
「外で待ってるから」
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「拓斗、休みだけど明日みたい」
「お、そうか。じゃあ、明日、お前のバイトしてる店でよろしく!」
「えっ!? な、何で?」
「いや、楽だし。嫌なのか?」
「うう~ん……嫌って言うか、バイト先で休みの日に来るのはちょっと……」
「でも銀木さんがお前のバイト先に行ってみたいって言ってるらしいぞ」
「銀木さんが……んー……じゃ、じゃあ、いいよここで」
「よし、じゃあ、明日11時でいいよな? 昼でも食べながら話をしようぜ。じゃあな」
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本当に唐突に決める人だ。バイト先で食事は嫌だけど、別に見られて困るわけでもないからいいと言えばいいけど、何だか気乗りはしない。
あ、外に行かないと。佐倉さんを待たせてたんだ。
「す、すみません、お待たせしました」
「いいけど、もしかしなくても不器用?」
「え?」
「らいんにそんな時間かけるとか、よほど会話のやり取りが苦手な相手だったのか知らないけどさ」
「ごめ……い、いえ、そんなことはないけど」
「じゃあ、行こうか」
仕事としての一環とは言え、佐倉さんは教育係となってから毎日途中まで送ってくれている。もちろん、あの人が姿を見せたことは無い。まして今は夏だから辺りも明るい中で、律儀に送ってくれる。
そんな佐倉さんのことをわたしは、素直じゃないけど頼れる人として好意を持つようになっていた――