友達の影響。
付き合ってないけど。
-----------------------------------------------------------------------
「サーヤ、久しぶり~元気?」
「う、うん」
「あのさ、バイトの休みっていつ?」
「明後日だったかな……」
「オッケー! 10時に中野駅に来て」
「え?」
「まぁいいからいいから! じゃね、来てよ! あ、可愛い服装でよろしく~」
------------------------------------------------------------------------
何か、らいんの話し方も拓斗に似て来た感じがする。行き先を決めて迷わせない辺り……
※
「だから、それだと偽笑いだっての! 美月さんって友達少ないだろ? それも女の」
「そ、そんなの関係ないと思いますけど」
「いーや、ある。どうせ普段から猫かぶりしてたんだろ? 自意識過剰って意味、分かる? 何でもかんでも思い込みすぎるから変な男に好かれるんじゃないの?」
「へ、変なって、そんなことない……」
付き合うまでには至らなかったけど優しい人だったし、悪い人では無かったのに何でこんなことにまでなってるの? 教育係だからって関係ないじゃない。
「……別にあんたの恋愛事情に興味無いけど、あのお友達のせいで変な影響受けてるって自覚ないだろ? あんたの笑顔はあの客と同じなの! 心が無い笑顔、作ってて何考えてるのか分からない笑顔……」
「心が無い――? 優しい人だったのに?」
「19だっけ、美月さん。いや、年は関係ないけど男っていうのは好きな女の子とどうにかなりたい、どうにかしたいって思ってたら、何でもやるもんなんだよ。人によるけど、ほとんどそうなの! 優しいだけの男は俺からしたら胡散臭い。まして、あんた免疫無さそうだし……」
あぁ……わたしはそういうことなんだ。だから……なんだ。
「とにかく、俺はあんたの笑顔を取り戻す努力をするから頼むよマジで……」
「……はい」
影響、か……。付き合うことにはならなかったけど、彼の事が好きだった。会うたびにあんな笑顔を見せられたら、そのために会いたくなってそれがわたしの普通になっていたんだ……そっか。
「美月さんの笑顔がマシになったら、接客戻ってもらうからよろしく」
※
「厳しいね、佐倉。そんなに嫌いなのあの子のこと……」
「カンナさん。好きじゃないだけで嫌いでもないです。元がいいのに、あんなことも出来ないとかありえなくないですか? 素直に笑うだけなのに勿体無い」
「自分を見てるみたいで嫌なんだ? あなたがここに初めて来た時もあんな感じだったものね~似た者同士かー」
「俺はあの子みたいな事情じゃないですよ」
「教育係、頑張ってね。で、美月さんのこと何とかしちゃえ!」
「……興味ないです」
※
「サーヤ~~こっち」
「お、おはよ。ど、どうして中野なの?」
「サーヤを元気づける為のお笑いライブを見るの。それと、サーヤに紹介したい人がいるの」
「紹介?」
「とりあえず小劇場に移動しよ。そこで待ち合わせてるから」
突然呼んで中野まで来て、お笑いライブ? それはいいけど、紹介って誰を紹介するの? 今日は拓斗が一緒にいないみたいだけど、誰がいるというの? 不安しかないまま、待ち合わせ場所に向かった――