意外すぎて
見せかけの優しさだった?
確かに佐倉さんの言う通り、仕事に支障が出るなんてよくないコトだ。唇をギュっと噛みしめながら、ダイキさんと話す為に声をかけた。
「ダイキさん、お話が……」
「美月さん、どうしたの? 今は休憩中?」
「……はい。それで、聞きたい事があるんです」
「うん、何?」
「ダイキさんはまだ、わたしのこと……好き、なんですか?」
「そうだとしたらどうする? 拓斗と別れたよね? あ、俺がこの店に来てるのは美月さんをつきまとってるって思った? 違うよ? 現場が近いから利用してるだけ」
「ど、どうしてわたしをずっと見ているんですか……?」
「好きな人のことはずっと眺めていたいから。変かな? それとも嫌だった?」
やっぱり、そうだったんだ……。でもわたしの気持ちはもう。でもどう伝えればいいの? 直接伝えるのはやはり怖い……
「わたしは……」
「ごめんね。困らせてるよね? 俺、まだ好きなんだ……だから、待ってちゃ駄目、かな?」
「わたし、ダイキさんとはもう……」
「……外行って話そうか」
「――え」
刹那――
外に連れ出そうとしたのか、突然腕を引っ張られてしまう。え……ま、待って何をしようとしてるの……駄目――嫌……
「美月、何サボり? 仕事まだ終わってないし休憩時間過ぎるけど?」
「え?」
「それに、ここはそういうお店じゃないので、ご退店いただけますか? お客様」
意外なことに佐倉さんがダイキさんの腕を抑えつけながら、営業スマイルで静かに諭している。ダイキさんは、店員の意外すぎる力で動くに動けないでいた。
「……くっ……すみません、出ます」
何だか、あっさり? お店から出て行くダイキさん。幸いなことに店内のお客さんは少なかったこともあって、気にも留めなかったみたいだった。
「美月、彼に何言った? ってか、あの人の作り笑いに気付かなかったのか?」
「え……?」
「だからそういうことだって言ってんの。はっきりさせないとまた来るよ? しばらく来ないかもだけど、来たらどうすんの? 面倒なことやめてよマジで」
「う、うん……あの、ありがと」
「助けてないし、仕事なんで。まぁ、とにかくさ奥に行って顔洗って来て」
「あ、う、うん」
「美月は作り笑いじゃなくて、本当の笑顔見せるの仕事なんだから、そのままじゃ駄目っしょ。早く行きなって! それに綺麗な顔が台無しすぎる……」
言われた通り、鏡で自分の顔を見ると思いきり涙が流れてた上に、青ざめた顔色で人前に出ていい状態じゃなかった。
助けられちゃったな……でも仕事の一環って言ってたし、そういうことなのかな。それでも、佐倉さんの意外な行動に驚いたわたしは、しばらく胸の鼓動が収まりそうになかった――