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執着……?

             佐倉としうえ美月としした



二谷にたにさん、美月アレは奥で何をやってるんです?」


「あ、あぁ……美月みづきさん、現場系の人に苦手意識があるみたいでさ。俺も詳しく聞いてないんだけど、失恋してそれ以来その格好の人たちを見ると表情かおに出てしまうから引っ込めてるとしか……」


「なるほど。(やっぱり自意識過剰か)にしても、ひどいですね」


「いやーでも、彼女可愛いし許せるよ」


「可愛い? 美月アレが? ……俺、ちょっと注意してきます」


「そっとしてあげなよー」


美月みづきだっけか。あんた、仕事さぼって何してんの?」


「さぼってなんかいないです。キミ、佐倉くんだよね。年上せんぱいに向かって呼び捨てはどうかと思うんだけど。キミ、高校生でしょ?」


「誰が年上で誰が高校生?」


「わたしが年上で佐倉くんが高校生」


 背はわたしよりも高いけど、運動してる感じじゃないくらい細身だし、どう見ても高校生の彼に呼び捨てされてさすがのわたしもキツく注意をしてみた。


 佐倉くんは満面の笑みを浮かべて、わたしの目の前に学生証を見せて来た。それを見て、驚いたわたし。


「えっ……? 大学生? 嘘でしょ……」


「俺、美月あんたより年上。先輩はむしろ俺の方。だからくん付けはやめてくれる?」


「で、でも、佐倉く……さんは新人さんでしょ? だからわたしの方が先輩だと思うけど」


「まともにホール立ってない人がよく言えるよね。どうせアレでしょ? 思わせぶりな態度でお客さんに言い寄られてるんでしょ? と言うか、仕事。仕事しないなら帰れば?」


「ち、違います! わたし、ずっと見られててそれが苦手なだけで……サボってないから」


 わたしに会いに来てくれているのか、現場の人たち数人とダイキがここの所、よくお店に来ていた。わたしは彼にラインで別れというか、もう会えません。と返事をした。けど、返事は帰ってこなかった。それと言うのも、拓斗あいつとマキが付き合うことにしたあの場所で、彼は何も言ってくれなかった。それがわたしの中ではショックで、そのまま付き合う気持ちになることがなかった。


 そのことがあって以来、わたしは特に何も言わずに彼との関係をラインだけで終わらせた。そう思っていたはずだった。それが、()()()()彼が立ちよったファミレスでわたしと再会して今に至っている。


「ふぅん? 元カレか何か?」


「ううん、友達」


「ふぅん? 何かを期待させたんじゃないの?」


「そんなこと、ない」


「よくは知らないけど、美月あんたは思わせぶりな所があるんじゃないのか?」


「彼は優しい……優しかったけど……今はそんなの関係ないし」


 今思えば、彼が言っていた、優しさが真実ほんとうとは限らない。なんて言葉が胸を痛くしている。きちんと向き合って話をしなきゃ駄目なのは分かるけど、あれだけ会いたくてたまらなかった彼のことが何故か怖い。


「……とりあえず仕事してくれ」


 彼の気持ちを確かめなきゃ。そう思ったわたしは、休憩をもらって彼の席へ向かった――

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