彼と彼女とわたし。
どういう意味?
「行ってきます」
バイトに向かおうとすると、隣の家から拓斗とマキが出て来た所に遭遇してしまったわたし。意外にも上手くいってるんだ……なんて思いながら、声をかけることなく歩き出すと背中越しに声をかけられた。
「サーヤ! どこ行くの? 少し話そ。どうして学校辞めたのとかも聞きたいし。あっ、たっくんがいたら話しづらいでしょ?」
そう言うとマキは拓斗を家の中へ戻した。待って、「たっくん」って誰? 拓斗のコト……? 嘘でしょ。もうそんな関係なの?
「ねえ、どうしていきなりやめたの? それに私にも連絡してこないよね。何で?」
「学校はやめようと思ってただけで別に意味はないよ……それにマキはもう知っているんでしょ? 連絡してどうにもなることでもないって。今はわたし、バイトで忙しいから……」
「まぁ……一応ね。でもあの時どうして教えてくれなかったの? 言ってくれれば私も考え直したのに」
「ダイキさんとのことも知ってるよね。そんな状態で拓斗にそういうことが言えたと思う? それにマキ、拓斗に一目惚れだったんでしょ? わたしでもすぐ分かった。あんな所で全てを話してしまったら、こんな風にマキと話なんて出来なかった。そうでしょう?」
「そ、そうだね。ごめん、わたし何も知らなくて……しかも勝手にダイキ君とサーヤが付き合ってるとばかり思っててあんなことを口走ってしまって……」
「ううん、それはもういいの。わたしもはっきり言えなかったのが悪いんだし。マキのせいじゃないから」
何となくふたりで下を向いて沈黙。そこに、拓斗が顔を出して声をかけてきた。
「もういいか? そろそろ俺らも出かけるし、お前もバイトだろ」
「あっ!? い、いけない……急がないと!」
「サーヤ、暇なときは連絡してよね。友達なんだから!」
「うん、ありがと」
拓斗とマキはわたしと逆の方へ歩いて行く。わたしも急いでバイトへ向かおうとすると、何かを思い出したのか、拓斗から声がかかった。
「美月ってダイキとも別れたというか付き合うのをやめてその後、会ってないよな?」
「う、うん。でも、バイト先のお店には現場の人と来てたけど……どうして?」
「そうか……ダイキに気を付けろ。じゃあな」
「えっ? ちょ、ちょっと? そんな変なこと言い残さないでよ。何なの……拓斗の友達なんでしょ? なのにどうしてあんなことをわたしに言うの?」
でも今は早くバイト先に行かなきゃ――
※
「お、遅くなりました……」
ギリギリ間に合ってよかった……のに、わざわざ声をかけてきた佐倉くん。
「甘えすぎじゃないの?」
「ま、間に合ったんだから、そういうこと言わないでくれます?」
「早く着替えてくれば?」
もう! 何なの? ムカつく~~……そんなことを思いながらホールに出たわたし。
去り際の拓斗に言われた言葉のことをすっかりと忘れていた。アレはどういう意味だったのだろうか――