儚い恋。そして――
わたしとカレの答え
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「拓斗に話があるの」
「ここで話せることか?」
「ううん、外で話したいの」
「……分かった。今家にいるから、外に出る」
「ありがと……」
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やり取りを終えてすぐにわたしは玄関の扉を開け、外に出た。家が隣の拓斗はすでに外に出ていた。
「よぉ、美月」
「……うん」
拓斗はたぶん、何となく分かってるのかもしれない。だからなのかな……どことなく寂しそうな表情を見せているのは。
「……わたし、付き合わないから」
「それは、ダイキ……か?」
首を左右に振って、視線も落としながらわたしは続きの言葉を口にする。
「……わたし、いまは誰とも付き合わない――」
これが答え。偽りと、多角関係なんてそんな恋は望んでない。それなら、拓斗もダイキさんともお別れした方が”次”に進めると思うから――
「ダイキだけじゃなく、俺も……なのか? 聞いていいか?」
「わたし、拓斗に声をかけられてからずっと、ドキドキしてたの。初めて”好き”を感じたんだよ。だけどね、やっぱり駄目。わたし、拓斗と付き合いを始めてからずっと、寂しかった。会いたいのに会えない……そんな気持ち、辛いよ。そんな不安を優しく埋めてくれたのはダイキさんだったけど……わたし、拓斗のことがずっと、脳裏に浮かんでいたの。好きという気持ちを求めながら、あなたのことを追い求めていたの」
「美月……お前……」
「拓斗のこと、嫌いになんてなれるわけがない。それなのに……ひどいよ」
「ダイキがどう思ってるか俺は知らない。だけど、美月……お前、何で拒むんだよ? 恋に幻想を求めすぎなんだよ! お前、可愛いのに、男がお前を欲するのは当然なのに。ソレを否定されたら離れるしかないだろうが!! 何で我慢しなきゃいけないんだよ……おままごとみたいな恋愛は勘弁してくれ……」
「――っ」
「言っとくけど、俺はお前とダイキのことに関係なく、お前の友達と付き合うから。告られて、俺だけを見てくれる子は無下にしねえよ。何でお前、ダイキなんだよ……お前もひどいことしたんだよ」
「――それが答え、なの?」
それが答えだと言わんばかりに拓斗は目を背けた。そ……っか……そう、なんだ……
「じゃあな」
拓斗はわたしを見ずに家の中へ戻って行く。わたしも部屋へ戻り……”カレ”にも別れを告げた。
※
専門学校をやめ、マキとも会わないまま、わたしは自分の部屋の中で泣き続けた――
今は何もしたくない、誰とも会いたくない……涙を流す日を繰り返し、月日が過ぎ去っていく。
7月――
アルバイトを始めていたわたし。過ぎたことは忘れて、ただ前を進むために。
そんな想いで始めたファミレスで、わたしは再び運命と出逢う――