そしてわたしは……
偽りの関係。
友達のマキにわたしはダイキさんとのことをベラベラと話したわけではなかった。だけど、彼女はわたしが建築中の現場に行くのを何度か目撃していて、ダイキさんと会っていたことも知っていたらしい。
そのことを彼女は意地悪く言ったわけではなくて、勝手にダイキさんがわたしの彼氏だと思い込んでいたのが、今回の騒動のきっかけになってしまった。そう、マキは悪くない。
「こそこそここで会っていたわけか。へぇ~? あぁ、だから俺にはほとんど連絡も寄越さなかったわけか」
「そ、んなんじゃ……」
「……拓斗……」
わたしもダイキさんも言葉を出せずにいる。何を言っても無駄だから――
「え? サーヤとお知り合いなの?」
「そうですよ。美月とはお友達なんですよ。ところで、あなたの名前は?」
「あ、はい、私、マキです。よろしくね!」
「美月とお友達なの?」
「です!」
「そうなんすね。じゃ、俺らも付き合っちゃいますか?」
「え? いいの? 本当に!?」
「いいよな? 美月、それとダイキ……」
「――っ」「……」
何も……何にも言えないよ。わたしも、ダイキさんも息苦しいよ……どうしてそんな……
「た、拓斗……どうしてそんなこと、言うの? ねえ、どうして?」
「お前に関係あるのか? ただの友達に」
「そうじゃないじゃない! だって、わたしたち……」
「あ、あの……美月も、それに拓斗さんもどうしたの? ふたりはどういう……」
違う雰囲気を感じてマキが不安げに声をかけてきた。わたしがマキに正直に言わなきゃいけないんだ。
「何でもないよ。じゃあ、俺、マキさんと付き合うことにするよ。これで文句ないだろ?」
そう言いながら、マキの肩を抱いて体に引き寄せる拓斗。どうしてそんな嘘をつくの? 酷いよ……
何も知らないマキは嬉しそうに満面の笑顔を浮かべながら、拓斗をじっと見つめ続けている。
「ま、待って……駄目だよそんなの、おかしいよ……偽り続けて誰が幸せになれるの?」
どうしてわたしに別れようって言わないの? わたしが言わないと駄目な事なの? ねえ……
「……美月さん、そろそろ仕事に戻ります。……また――」
「――はい」
マキは嬉しそうな表情で、仕事に戻る拓斗を見送っていた。わたしはその場からしばらく動けずに何も考えられずに、立ち尽くしていた。
マキにひどいことしないで……せっかく出来たお友達なのに。明日、明日もう一度、拓斗に――