付き合う…?
名前を呼ばれるとドキドキする…
帰り道、今日もわたしは一人で通学路を歩いている。友達はみんな、カレがいてその話で盛り上がっている。わたしにはその資格がない。だけれど、こんな憂鬱な日々も……今日を境に変えていくんだ――
「なぁ、こっち、向いてくれないかな? お前、美月だろ」
「ひ、人違いでしょ……」
「あぁ、やっぱ美月だな。そういう所がちっとも変わってないのな」
わたしのことを馴れ馴れしく話すこの男は、家が隣なだけの馴染み友達、黒野拓斗。
恋人でもない、カレシカノジョでもない、恋仲でもない。
それなのに、どうしてこんなにもわたしの心を乱してくるの?
あなたが軽く呼んで来るわたしの名前は、安くないのよ……
「そういうあなたは、黒?」
「いや、白だ。あ、悪ぃ、それは美月のシャツの色だな」
「面白い? わたしは笑わないよ? ねぇ、何か用があるの?」
「名前を呼んだだけ。で、美月って呼びたかっただけだ。それだけだ」
ホントにそれだけなの? わたし、名前を呼ばれただけでドキドキするんだよ? ねえ、あなたは?
「わたしは……ううん、いい」
「美月、俺と付き合わねえ?」
急転――
わたしはこの男と恋をしてもいい? 誰が答えるわけでもない、答えるのはわたし自身だ。
付き合う、彼女になる? 彼氏と呼ぶ? わたしが……
「付き合うって、なに?」
「それは恋人になるってことだろ。なんだ、美月はしたこと、ないのか?」
わたしは、あるよ……好きになったことなら――