守ってください
包み込む優しさ
わたしの方から勢いで誘ってしまった。でも、友達だし普通のことだよね。何だか会いたいなって思った。
昼前――待ち合わせ場所の駅にたどり着くと、すでにわたしを待っていた彼の姿を見つけた。
私服の彼は初めてで、何だかそのギャップにドキドキしているわたし。
「こ、こんにちは」
「美月さん! 早いですね。あ、俺は今来たばかりなんですよ」
どう見ても待ってくれていたみたいなのに、こういう気遣いって嬉しい。遅れて来る拓斗とは大違い。
「ありがとうございます。そ、それじゃ、行きます?」
「そ、そうですね。じゃあ、この近くにすぐカフェあるので、そこにしますか」
ダイキさんはカフェに向かって、歩き出し、わたしも彼の後ろに付いて歩く。気のせいか、歩幅を合わせてくれているみたいで、付かず離れずの距離を保ってくれている。
「ここです。入りますか」
「あ、はい」
昼時だけあって、空いてる席が少なかったけどダイキさんは素早く、席を確保してくれた。わたしは正直言って、チェーンのカフェどころかカフェに来ることがないから、ダイキさんの行動力はありがたかった。
「あれ、美月さんは普通のコーヒーを頼むんですね」
「え? お、おかしいことですか?」
「あ、いや……このカフェでソレを頼む人あんまりいないので、何だか気になってしまいました」
「わたし、普段来ないですし、色々メニューがあってもよく分からないんです」
「俺も同じです。と言いながら、ダークモカとか頼んじゃっててごめんなさい」
「いえ~お好きな物、頼んでください」
「アザッす! じゃなくて、ありがとうです」
そっか、もしかして言葉も普段使いじゃなくて気を付けてくれてるのかな? 何だか嬉しいかも。
「美月さん、専門行ってるって言ってましたけど、どこに行ってるんです? あ、聞いてもいいですか?」
「大丈夫ですよ。わたしは、服飾の学校なんです。でも、この近くじゃないですよ」
「おー服ですか! じゃあ、将来はそっちに?」
「んー……それはちょっと、分からないんです。学校、やめてバイトでもしようかな、なんて」
「何かあったんですか? 俺で良ければ聞きますよ」
ダイキさんに話して分かる……あ、分かるかな。助けてもらった時のことが関係してるし。
「実は……」
「マジっすか? じゃああの時、俺らが助けた時の男ってそういう繋がりがあったんですね。何かその女、許せないですね。俺が美月さんと同じ学校にいたら守ってあげることが出来たのに……悔しいっすね」
「そうですね。ダイキさんがいれば、嬉しいし……お話ももっと出来そうですね」
「俺、もっと、美月さんと会いたいです。それで、もっと話してそれで……えっと……」
何だか照れてる? 言い辛そうにしてるけど、たぶんわたしと同じ気持ちなのかもしれない。
「ダイキさん、あの……仕事が休みの時、わたしと会ってくれますか? よ、よければですけど……」
「よ、喜んで!! って、居酒屋みたいですね、すみません。休みの日は、美月さんと会う日に設定しとくんで、俺、必ず守りますから」
わたしと会ってくれる。休みの日に必ず……彼のその言葉は沈んでいたわたしの気持ちを明るい所へ引っ張ってくれる。彼の心に応えてあげたい。そう思いながら、次の休みも会うことを約束したわたしだった。
これまで感じたことのない包容感を目の前のダイキさんから感じてしまったかもしれない――