新たな恋の予感?
イケボ?
「美月さん! どうしたんです?」
「ダイキさん? あ、そっか……ここ、この前の現場なんだ」
「なになに~? もしかして彼氏? 何だ、こんなに素敵な彼がいるじゃん。しかもイケボ。私、今日は帰るね! サーヤ、またね! 後で連絡よろしく~」
何でか知らないけれど、勝手に気を使われてマキは先に帰って行った。彼氏じゃないのに……でも……
「あ、あの、ダイキさん、イケボって何ですか?」
「え? あーアレか。イケボ……容姿や性格は置いといて、イケボ……イケメンボイスってことだよ。そっか、俺ってイケボだったんだ。初めて知ったかも」
「イケメンボイス……な、なるほど。そうなんですね……で、でも、ダイキさん、声だけじゃなくて優しくて、その……いい表情するし」
あれ? わたし、何を言ってるんだろ。どうして必死にダイキさんを慰めるようなことを言ってるの?
「あははっ……美月さん、いいよ気を遣わなくて。俺はあんまりイケメンじゃないからね~。必要なのは力と根性と、体力だけだよ。それが職人って奴かな」
「ふふっ……ダイキさん、面白いんですね。あの、サボってて大丈夫なんですか?」
「違うよ。今は休憩中だよ。ホント! ホントに本当。やっぱり、美月さんいいね」
あれ? 何だろ……心が落ち着く感じがする。拓斗の時と違う何かが……でも。
「あ、そうだ! 美月さん、スマホ……いい? あ、取り上げるわけじゃ無くて、俺の……登録して欲しいな、と」
「あ、はい。どうぞ」
悪い人じゃないって言うのは分かってるし、拓斗の友達だし……わたしを助けてくれたダイキさんに、わたしは躊躇うことなく、スマホを手渡した。連絡位、教えてもいいよね……
「あ、ありがとう。う、嬉しいな……俺さ、自分のスマホに女子の連絡先、入ってないんだ。だ、だから、美月さんがリストにいるなんて凄く嬉しいです」
あぁ、何だか……ホッとするような声。あ、だからイケボ……でも、それだけじゃない気がする。拓斗に会ってないからなのか、他の男子と会ってしかも、何か……胸が高鳴る? 違うよね……
「い、いえ。これくらいなら問題ないと思うので……」
「あぁ、拓斗でしょ? 一応、聞いたよ。それくらいならいいんじゃない? って言ってた」
そ、そうだよね。連絡先交換するくらい、普通のことだよね。むしろ、わたしが古臭いだけ……
「そ、そうだ。美月さん、今度ご飯……じゃなくて軽くカフェでもいいんだ。話をしたいなって思ってて、ど、どうですか?」
話……誰かと話をしたい。女子の友達は一応、まきだけ。でも、男子の友達なんていない……
拓斗の友達とお友達に……うん、平気。きっと、大丈夫……
「は、はい、都合が良ければぜひ――」
「おおおお!! やったーー!! あ、じゃ、じゃあ、後で連絡します。じゃあまた」
「はい、また」
ダイキさんは喜び勇んで、仕事へ戻って行った。あのはしゃぎようがまるで無邪気な子供の様に映り、思わず彼を見て、嬉しくなり微笑んでいた。
これって、もしかして……恋の始まり――とか?