恋を…したいはずなのに
押しに弱い…
よく分からないけど、教室にいるみんなの前でわたしは頬を叩かれた。でもこれで、久東千沙と縁が切れるならいいかな。
頬を叩かれたこと、拓斗と距離を置いていること、何だか気が滅入っていたせいか専門もやめようかな……なんて思っていた所に、友達になってよ! いや、もう友達! 宣言をされてしまった。
彼女の名前は「まき」。当然だけど、教室で話したことも無い。とにかく早口でまくしたてられながら、細かく気を遣ってくれてるんだなぁ……なんて、思いながら、受け入れた。
一人でいることの方が多かったわたし。拓斗の言う通り、友達なんていなかった。
「サーヤは彼氏いるの?」
彼氏……いるけど、距離が……どうなのかな? 別れてないし始まってもいない気がするけど。2回目のデートで何かを起こしてしまったわたしのせいで、抑えの効かない拓斗から距離を置かれたし。
「一応、いる……かな」
「……あー、なるほどね。それは……聞かないでおくね」
「どうして?」
「表情見てれば分かるよ。サーヤって、分かりやすいし」
「そ、うなのかな……」
「お姉ちゃんが相談に乗るよ~任せなさい!」
お姉ちゃんって……年下に見えるけど、実は年上なの?
「まき……は、年上なの?」
「どう見える?」
「さ、さぁ……」
正直、聞かなくてもいい……と言うより、わたしは他人のことにはあまり興味が無い。だからなのかな、もっと拓斗に興味を持って話を聞くべきだったのかもしれない。
「うーん……そこは聞いてもいい所だよ? 興味ないのは分かるけどね~でさ、今あなたが沈んでる理由が、なんとな~く分かるんだ。彼氏と上手く行ってないんでしょ?」
「ど、どうして……?」
「何か言いたそうな顔してた」
「別に……そんなこと、ない」
話すことないよ。こんなわたしと友達とか、止めた方がいいよ。
「またネガティブなこと考えてるでしょ。もうーどうしてくれようかこの女子は……あ、とりあえず、店でよっか。いい所に連れて行くから!」
……連れて来られた場所は最近、立ち止まって眺めていた建築中の住宅地だった。何か、”恋”とは程遠くなってる。
「ごめんね~変な所に連れて来ちゃって。私、何かが出来上がるまでの工程を見るのが好きなんだ」
「は、はぁ……」
「それとね、こういう現場ってイイ男がいるからオススメなんだ」
ホント、どうでもいいんだけど。わたし、何やってんだろ……こんなことしてたって何にもならないのに。
「あ、ほら、あの人、手を振ってるよ? 可愛いじゃん」
「……そうですか。わたし、帰りま……」
「美月さん! また来てくれたんですか? うわヤバい、緊張する……」
「えっ……? あ……」
もう帰ろう、何て思っていたら、聞き覚えのある声で嬉しそうに駆け寄って来る彼の姿があった――