想いの果て
2度目のデート、そして…
拓斗と久しぶりに逢える。どうやら、遠い現場に行ってたその仕事がひと段落したみたいで、少しだけ休みを取れたみたいだった。
自然と笑顔になるわたしは、彼が降りて来る駅の階段下で待っていた。いかにも仕事を終えたって感じの、彼の姿を見つけ、駆け寄るわたし。
「拓斗、お疲れさま」
「よぉ! 待っててくれたんだな、美月。嬉しいよ」
「うん、わたしも」
何だか、本当に久しぶりな感じがした。互いに歯を見せて笑いあうなんて、しばらくなかったし……
「このままどこか食べに行くか?」
「んーん、疲れてるなら一度戻ってもいいよ」
「荷物がちょっとだるいけど、ロッカーに入れとけばいいよ。よし、行くか」
「うん」
やっぱり、違う。わたしの彼氏は拓斗。友達の人と違うよ……まだ好きとか、それを聞かれると素直に言えないけど、何か、安心する。
※
「ちと、食べ過ぎた……うー苦しい……美月もそうだろ?」
「す、少しだけ……」
「だよな? じゃあさ、あそこ行かね? ラウ…」
「ん、いいよ」
わたしと彼はカロリー消費をする為に、ボーリングとかダーツとか何か色々、体を動かした。
「さすがにキツイな。疲労半端ない」
「仕事疲れでしょ、それ」
「……だよな、じゃあ今日は止めとくか?」
「何が?」
「デートのやり直し……」
あー……やっぱり、気にしてたんだ。そうだよね。キスもしないで何が”恋人”なんだろうね……それについてわたしは、彼を駅に迎えに行った時から、心の用意はしてたつもりだった。
「ん、しよっか」
「じゃあ、どこ行く?」
「あ、あのね……拓斗、疲れてるから今日は、カラオケでいいよ……」
「あぁ、それもいいかもな。座れるし」
”音”の空間の中で、キスをする……それなら別に、問題ないかな。それだけなら――
※
「で、どれ歌う?」
「嘘、何でそんな元気なの?」
「体を動かさない分、元気が余るからな~」
何曲か歌い終わって、そして……何か、適当なバラードか何かがかかったまま……そんな何てことない時間の流れ……彼は、わたしにキスをしてきた――
「……んん……」
ホント、何でこんな”キス”を拒んで、しかも涙したんだろ……って、思ってたわたし――
「――拓斗、あの……手、当たってるんです……けど……」
「……ごめん、当ててた」
それはちょっと予想外――”それ”は駄目。無理――
「それは、無理……だから――」
「あ、あぁ、だよな……悪い」
わたしに言われてすぐに手を離した彼。今はキスだけで許して欲しい。それだけでも、わたしの中の何かが、彼のことを好きという気持ちに向かわせている……そんな感じ。
でも、なんか……そうじゃなかった? どうして、キスをしたのに笑顔じゃないの? 何で……? 彼とわたしで求めている”答え”が違ったのかな。
そんな曖昧な感じで、2回目のデートは終わりを告げた。そしてまた――
「俺さ、求めすぎてんのかもしれない。でさ……俺また遠い現場に戻るけど、お前のこと、ダイキに任すわ。あいつ、いい奴だし、優しいし……それに……いや、いいや」
わたしのこと、名前で呼んでたのに、お前……? どうしてダイキさんが出てくるの? どういう……
「それ、どういう意味? 終わりなの……?」
「それは違う。俺が駄目なんだ。だから、仕事して頭、冷やして来る。ダイキはお前のこと、心配してたし、気にしてたから……それだけだ」
「そ、うなんだ……分かった」
よく、分からないまま、わたしと彼は再び、離れた――