少しずつ…
何となく……
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「ダイキに助けられたって?」
「う、うん」
「奴、相当テンション上がってた」
「そうなんだ」
「てかさ、何でそんな変なとこに行った?」
「……学校の人に無理やり……」
「へぇ……だからと言って一緒に外に出るのはどうかと思うぞ……」
「わたし、全然そういうの分からないし……」
「でも、美月が無事で良かったよ」
「……うん」
「美月……ダイキに惚れるなよ? じゃあな」
「あ、ちょっと……(未読)」
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何でそう言うコト言うの……? わたしは危ない所を拓斗の友達のダイキさん達に助けられた。けど、だからと言って、それ以上は無いのに。
拓斗とはタイプが違う人。何だか、優しい人だった。でも、友達……でしょ? 惚れるとかそういう考えにどうしてなるの? 意味、分からないよ。
拓斗……もしかしてわたしがキスを拒んだ時から、ずっと気にしてて怒ってるの? だけど、そんな感じは見せてないし、たぶん、仕事が忙しいからわたしに構ってる余裕は無いのかもしれない……
※
学校の帰り道、ふと住宅の建築現場らしき場所に目が留まった。これのこと? ダイキさんはこういう場所で仕事しているのかな?
シートで覆われた建築途中の住居を、興味ありげに見ていたわたしは不意に、後ろから声をかけられた。
「おっ! ……興味あるの?」
「え、あ……」
「美月さん? え、どうしたの?」
「あ、あの、何となく見てただけ……です」
「そうなんだ、残念……」
「……え」
「ああ、そうそう、拓斗の奴は今、ちょっと遠い現場に行ってるんだよ。ちなみにだけど、俺と彼は友達ね。って、もう知ってるよね。それでね、職場は同じだけど現場は違うんだよ」
「そうなんですか? わたし、仕事のことはあまり聞いていなくて……」
「どうして?」
どうして? って、仕事のことを聞いても分からないだろうし、わたしは聞いてはいけない気がしたから……それだけですよ、ダイキさん。
「いえ、特には」
「そっか~……それはまぁ、そうだよね。あ、ごめんね? 引き留めちゃったね」
「いいえ、大丈夫ですから」
「美月さん、あ、のさ……いや、今はまだ……いいや」
「……?」
「じゃあ、気を付けて帰ってね」
ダイキさん……か。優しい話し方、優しい態度、でも……それだけ、かな。拓斗の友達だから――