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永遠対立関係  作者: P-Rin.
14章 鍵
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14-1 訓練

 深夜。別世界ではあいかわらずカーニバルが行われていた。氷民族も今日は訪れていて、また武器の調達にやって来ていた。カノンは薬を、ジュリは食料を探しにそれぞれが単独行動をしていた。武器の調達にあたった部の長であるタンポポは、2つの銃を見比べながら迷っていた。その美しく揺れる白髪はよく目立つために、タンポポはローブのフードを被っていた。


「んー、どっちも良いんだけどねえ。どっちが良いと思う?」

「お目が高いよお客さん。それぞれ良さがあるけれど、俺はこっちを勧めるかな。狩猟用だろ?」

「この間は軽く襲撃に遭ってね。うちもそろそろ危ないかもだね……あっごめん、連絡だわ。こっちにするから置いといてくれる?」

「はいよ」


  タンポポは素早くカーニバルから離れ、路地裏へと急いだ。連絡鳥チリフに応答すると、そこにはアルトゥールが映っていた。あまり表情を変えずに、真顔でタンポポは相手を見つめた。


「やっーと繋がったな、タンポポ。今はカーニバルでも楽しんでるのか」

「今更何の用なの……」

「実は人を探していてね。君のところは色んな人が来るんだろう?身分や血は関係ない。それが異界の掟だったね」

「いつまで喧嘩を続けているの」

「決着が着く日はもう目に見えている。ナターシャを復活させる方法もいくつかあるようだ。ようやく、これで私たちサングスターと、ナターシャと共に生きる世界が実現できる」

「ナターシャって、フェアリーの……確か、グレイの一族を壊滅させるという復活方法だったね。それではない別の方法がもしもあるなら……それはまた考え直すべきことだと思うの。……で、誰を探しているのかしら」

「同じ一族の魔術士だ。ツバサ・サングスター。知ってるか?」

「初めて聞いた名だわ」

「その男のチームに、私の獲物が居るんだ。アルル・フェアリーって言うんだが」

「フェアリー?私達がフェアリーのことを獲物呼ばわりなんかして良いのかしら、アルトゥール」


  冗談じみたようにタンポポが言うと、アルトゥールは笑って答えた。


「ナターシャの復活にフェアリーの血が必要なのだ。ただ、それだけだ」


 タンポポは唇をぐっとバレないように噛んだ。平然を装いながら、拳をにぎりしめる。アルトゥールが今口にした事実を嫌というほど噛み締めた。


「復活には犠牲がつくってことなのね。気の毒なこと。残念だけど、その名前は知らない。フェアリーにもご縁が無くてね。流石に氷の世界にまでは来ないみたい」


  ジュリとカノンは集合場所にやってきたが、すぐにタンポポが居なくなったことに気づいた。ジュリがふらふらと辺りを歩いていると、タンポポの声がした。


「じゃあまた、アルトゥール」


  ジュリの足はそこで止まった。すると路地裏からタンポポがひょいと現れ、タンポポは笑った。


「買い物は終わったの」

「あ、ああ……」

「……あ、そうだ、武器取り置いて貰ってるんだった」


  タンポポは走って武器商人の元へ走っていってしまった。長く1本に結わえている髪をいじりながらジュリはその場に突っ立った。その様子を不思議そうにカノンは見て、どうしたのかと尋ねた。


「いいや、何でも……」

「うわっ」


  ガシャンと音がした。騒がしいカーニバルの人混みで、音はすぐにかき消された。カノンがしゃがみこみ、割れてしまった薬瓶の破片と粉を手でかき集めた。


「全くついてないよ、さっき買ったばかりなのに……痛っ」


  カノンが手を引っ込めると、人差し指に丸い血がぷっくりと広がった。特に動じず冷静にカバンから包帯を取り出すと、自分で切り傷の手当を行う。

  何だ、この胸騒ぎは。ジュリは黙ったまま悶々と考え込んでいた。


「ジュリ、帰るよ」


  いつもと変わらないタンポポの声に初めて鳥肌が立った。


「どうしたの、怖い顔して」

「何でもないんだ。帰ろう」


  3人はジュリが開いてくれた、異界へ繋がるワープの扉へ入った。その夜、ジュリはよく眠れなかった。



  体育の授業は午後からバトルフロアで行われることになっていた。バトルフロアとは、かつてベティとレイナが魔術バトルをした場所である。普段は訓練や武術の授業に使用されることが多い。

  ツバサやベティ同様、単位の少なさに慌てて授業を受けに来る魔術士が多くその日の武術は30人程生徒がいた。


「まずいな……出席表見てきたら、俺、魔術数学も全然足りなかった」

「何でちゃんと計画立てて受けないの」

「魔術数学なんてやらなくても生きていけるだろ……そういうベティだって武術足りなかったんだろ」

「だから、私は武術1人で行くの嫌だったから避けていただけって言ったでしょ」

「何でも良いよもう……」


  始業時刻になり、鐘が鳴った。授業担当の教師である魔術士がバトルフロアに入ってきた。途端に男子がおお、と少し声を上げた。

  何故ならミニスカートを履いた猫の獣人が現れたからだ。ローブはまとわず、胸元のはだけたピンク色のポロシャツを着ていた(はだけているというよりも、胸のせいではだけているように見えるだけだった)。ガラガラと台車を引きずり、高いハイヒールの音を鳴らしながら生徒達の前に立った。くるくると巻かれた長い金髪に、真っ白な肌、悪戯っぽそうな紫色の瞳。ベージュ色の可愛らしいふわふわとした耳。綺麗な毛並みの尻尾。


「はぁーい生徒諸君、進級崖っぷちにいる諸君。武術の補講担当、ユリアナよ。短い間だけど、諸君のことをみっちり鍛えてあげるから覚悟なさい」


  するとユリアナは台車を前に引きずり、上にあるものを各自持っていけと言った。サドの風を吹き回しているユリアナに、一部の男子生徒がひそひそと何かを言っていた。

  台車の上にあったのは剣の持ち手の部分だった。ユリアナは手を1回叩き、生徒に注目させると話し始めた。


「私の授業では、主に剣術の訓練をするわ。魔術士だからって、魔術にばっか頼っていると防術壁でもかけられた途端に諸君は使いものにならなくなる。それを防ぐための剣術よ。剣術を身につければ、棒切れ一つでも戦うことができるわ。まずはペアを作って。今日は偶数だから余りものは居ないはずよねー……諸君の持っているのは術式剣って言って、持ったまま魔術を発動させるとそれぞれの魔術が剣状になるってもの。試しにやってごらんなさい」


  めいめい魔術を発動させると、それぞれの魔術が剣状と化して固体化した。ベティの剣は固定化してもバチバチと電気を放っていた。ツバサが持つ剣も黒く輝きだした。


「剣はできたわね。アースのスポーツの1つでスポーツチャンバラというのがあるけれど、そのルールに乗っ取るわ。先に3本取れた方が勝ち。1本というのはどういうことか分かるわよね。体のどの部分でも当てられたらそこで1本よ。相手の動きを読み取りつつ動く!良いわね、諸君。とりあえずまずはバディとやってみなさい。じゃあそれぞれバディと向き合って」


  生徒達は剣を構えて真剣な表情になる。基本魔術士は運動神経が良い。しかし、剣術は得意不得意が分かれるものであった。


「1本!」


  そう叫ばれた途端、また肩に剣が当たった。2本、3本といとも簡単に先取されてしまい、ツバサは唖然とした。ふん、とベティは得意げな顔をしていた。


「ツバサって剣術苦手なのね。それともまさか手を抜いてるとか?」

「も、もう1回だ」


  だが、結果は何にも変わらなかった。ベティに向かって剣を振り回すことには気が引けた。するとユリアナが近づいてきて、にやにやと笑いながら言った。


「上手くいかないみたいね?たまに居るのよね、極端に苦手な奴。彼女じゃなくて違う人と組んでみたらどうかしら」

「だったら俺が相手をしましょうか」


  そう言ってユリアナの隣にやってきたのは、初めて見るエルフの青年だった。


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