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永遠対立関係  作者: P-Rin.
13章 非公認依頼
93/131

13-8 兄と妹 - いい人

 

  部屋の前にテープが貼られ、ドアはロックされていた。タイミング良く隣人が外へ出てきて、ツバサはすぐに隣人を捕まえた。


「ツ、ツバサさん、何か俺に用っすか?」

「俺の部屋何でこうなったかわかるか?!」

「中に入れないってことですか?あ、あれじゃないですか、管理人の……家賃滞納とか、その辺じゃ」

「家賃滞納……まじか。ありがとう……」


  足早に管理人室に向かうと、隠れ美人と言われている管理人が本を読んで座っていた。ツバサはすぐに管理人に声をかけた。


「何かご用?」

「部屋が、ロックされちゃって。入れないんすけど……」

「あー。ごめんなさいね、私は女子寮の担当だから。そういうことは男子寮の管理人さんに聞いてくれるかしら?」

「そ、そうですよね、やっぱりそうですよね……」


  男子寮の管理人というのは気難しい老婆だった。約束事には厳しく、門限を破ると何があっても入れてくれないような人だった。不思議なことに男子寮生の名前も顔は全部覚えていることでも有名な管理人だった。

  ツバサがのろのろと老婆の管理人口に行くと、老婆はこちらを見ずに声をかけてきた。老眼鏡を少しずらしたまま、手は編み物を続けていた。


「あんたは家賃を滞納し過ぎ。その罰さ。ロックは解除しないよ。家賃を払ってもらってもね」

「ええっじゃあどうしたら良いんですか?!」

「1週間くらい野宿でもしろ。それか友達の部屋にでも泊めてもらって自分がどんなに迷惑な奴かその身体で思い知れ」


  しわがれた厳しい声に何も口答えできなくなってしまう。ある意味では男子寮の管理人にピッタリの老婆だった。


「家賃は払えるんだろうね」

「……いくら滞納してるんですか」

「40万」

「40っ……うう、はい、払えます」

「最近家賃を払わない奴が多くてね。流石に追い出すわけにも行かないから、最高5ヶ月は待ってやることにしたんだよ。結局初めてあのテープを貼らせてもらったよ、ツバサの部屋に。しっかりしなよ、あんただって後1年もしたらここから出ていくんだ。家賃を滞納したら簡単に追い出されるからね」

「……余談なんですけど、宿舎出た後って皆どこに住んでるんですか?」

「王宮の宿舎に移る人もいるが……最近はチームハウスってやつが流行ってるね。魔術士にとってチームは家族みたいなもんだからね。お前も無事チームに入れたそうじゃないか」

「へえ……あっはい」

「家賃、頼むよ……後ね、あんた、隣に声とか音とか結構聞こえるから。気をつけなよ、これから。金が無いのかもしれないが、そういうのはホテルとかでするのが相手への配慮ってもんだよ」

「はい……はっ?!え?!」


  ツバサは思わず冷や汗をかいた。この婆さんには今後嘘をつけそうにない。全てを見抜かれている。全てを知っているのだ。


「これも結構最近多いんだ……周りを騙せても私のことは騙せないからね」


  自然に足がそわそわしてきた。今度は何を言われるか分かったもんじゃない。早くこの場から立ち去りたかった。


「あんたの部屋をロックする時に少し部屋の中を覗かせてもらったんだけどね。台所もシャワー室も綺麗に掃除されていたし、見た目によらず意外と家のことはしっかりしてるんだね。それだけは初めて安心したよ、ツバサ」

「……あ、ありがとうございます。じゃ、じゃあ俺はこれで」


  老婆は軽く微笑んだような気がして何故かツバサが照れくさくなった。1週間部屋が無いということもまた事件である。今度こそ自分が部屋に押しかける番だ。そう思い、ツバサは女子寮へ走った。ちょっと、と叫ぶ美人管理人の声が追いかけてきた。

  ツバサは1つの部屋の前で立ち止まるとノックをした。


「はーい……あら、お兄ちゃん」


  眠たそうな声でアスカはドアを開けると、しぶしぶツバサを中に入れた。ツバサがソファに座ると、アスカが水を入れたコップをテーブルに置いた。


「お兄ちゃんから来るなんて珍しいね。何か困ったことでもあったの?お金が無いとか?お金が無いのは私も同じです」

「家賃滞納してて部屋を1週間追い出された。お前だって今まで勝手に俺の部屋に入ってただろ。だから、しばらく居候させてくださいアスカ様。朝ごはんは俺が作りますから」


  多分大丈夫だろう。そう思いながらツバサは両手を合わせて頼んだ。しかしアスカの答えは即答だった。


「駄目」

「は?!何で?!困った時はお互い様だろ」

「私もうお兄ちゃんの部屋に行ってないでしょ。それに女子寮を行き来して、勘違いされたらどうするの」

「誰も勘違いなんかしないよ。俺達どっからどう見ても兄妹じゃん。何でだよアスカー!」

「兄妹でも駄目なの。お兄ちゃんは18歳、私は17歳、危険なのよ!私が!」

「いっつも俺の部屋に勝手に入ってたくせに!普通に泊まってたくせに!」

「それは今までの話!今は駄目なの!それに泊まったのは部屋に入れないっていう緊急事態だったからで」

「だから今俺はその緊急事態なんだよ!」

「駄目!」


  コップの水を飲み、ツバサはため息をついた。断固として譲らないアスカを説得するまで、おそらく長い道のりになるだろう。ふと戸棚の上に見たことがない大きな瓶があることに気づいた。瓶の中には硬貨が投げ込まれていた。硬貨は瓶の半分にも達していなかった。


「何それ」

「将来の為に貯めてるの。私の貯金だよ。盗まないでね。私はお兄ちゃんと違って単独行動で仕事してるんだから」

「将来?やっぱりアスカも家建てるの?」

「何で家……家かぁ、家も良いね。最近チームハウスとか流行ってるもんね。私も作ろうかな、チームハウス」

「いやアスカは単独行動じゃないの?」

「そんないつまでも1人じゃないよ」


  今度はアスカの首に見覚えのないネックレスがあった。藍色の石がトップの綺麗なネックレスだ。特にツバサはそれから干渉しなかった。

  結局居候する場所が見つかっていない。ツバサは仕方なくアスカの部屋でそのままチリフを呼び出すことにした。


「レンに頼むしか無いか……」


  ツバサがレンに連絡をしようとした時、ちょうどツバサの元にチリフがやってきた。ベティの困ったような顔が映った。困っているというよりもどちらかと言うと甘えているような顔だ。


「……何だよ、めんどくさい頼みはあんま聞きたくないよ。俺は今野宿の危機に晒されてるんだ」

「まだ何も言ってないじゃない。野宿の危機?だったらちょうど良いわ。ツバサ、武術の単位はもう取った?」

「武術?取ってないよ、多分」

「一緒に受けない?武術って、ほら、ペア作ってやるとかそういうの多いじゃない。だから私今まで避けてきてて。皆、武術は友達ととるって言うでしょ」

「うーん、まあ、良いけどさ。じゃあベティの家に1週間だけ居候させて」

「何その契約!そしたらお店で働いてもらうわよ。住んでるのは私1人じゃないんだから」

「契約になってないぜベティ……でも、働けば置いてくれるの?」

「狭くても良いなら私は別に構わないわよ。おばあちゃんにも聞いてみる。多分大丈夫だと思う。これからまた授業だから、じゃあね」


  交渉が成立すると、ツバサはやっと安堵をついた。アスカがふくれっ面で横に立っていた。何だ、と尋ねると早く出ていけとアスカは兄の背中をバシンと叩いた。


「これからシャワータイムなの、早くどっか行って」

「はいはい……まあ、何か、頑張れよ、色々と。無理はするなよー」

「……うん!」


  少しアスカは綺麗になった。ツバサはそんな気がしていた。


 ※ 以下 いい人


 13-9

 チームオセロは、非公認依頼を終えてから2日間の休息に入っていた。大金の小切手を全員で山分けしても、しばらくは働かずとも過ごすことができる状態になった。

 あれからアルルは自身の両親について調べようと奮闘し、レンにカノンのところ(異界)へ、共に行って欲しいと提案をした。

 しかしレンは、少し待ってくれ、と興奮するアルルをたしなめた。


「カノンは確かに魔女だけど、異界に居るんだから何かワケありなんだよな……多分。先に魔女の種族についてある程度調べた方が絶対に良い」


 そう助言をすると、アルルはリアにも尋ね、サークル城の資料室で調査をしてみると言った。レンもまた、王宮図書館に足を運んだ。だが、魔女に関して詳しく記載されている書物は1つもなかった。祈祷師の補助のような役割があり、薬を作れる長寿な女性であること。それはどこにも共通して書かれていたが、見た目や"死亡方法"については書物によって異なっていた。ある物には、魔女の存在を否定するものまであった。

 確実な情報は得られず、レンはため息をつき、小声で独り言を言った。


「まあ、アルルが魔女になるとか引き継ぐとかなんて言い出すことはまず無いよな……」


 その時、はっとして右手を挙げると本がレンに向かって降ってきた。1冊はキャッチしたものの、数冊はレンの足元の床にドサドサと落下した。


「わあっ!ごめんなさ!―ごめんなさい。怪我は無いですか」


 1人の少年が一瞬大声を出して謝り、すぐに小声でレンに声をかけてきた。大丈夫だよ、とレンは軽く返事をすると、落ちた本を集めた。

 "本能魔術の強化方法" "月光術と向き合い方"、そんなタイトルが並んでいた。

 背が小さく、14か15辺りに見えたその少年は、度の強めな丸眼鏡をかけており、短く刈られた黒髪もぼさぼさとしていた。おそらく、魔術の扱い方に苦戦しているのだろう、とレンは思った。


「あ、ありがとうございます……怪我本当に無いですか?あ、あったら僕が治癒魔術で―」

「いや、俺は本当に大丈夫だよ」

「すみませんでした、僕が移動魔術でさえ下手くそなばっかりに……」

「ああ、高いところの本を魔術で取ろうとしたんだね。……他に、もし読みたいものがあるなら取ろうか?」

「い、いえ!!大丈夫です!ありがとうございますすみませんでしたっ!!」


 顔を真っ赤にして少年は早口で断ったかと思うと、またもや早足で本を抱え去っていった。レンは余計なお世話を焼いてしまったかと、少し後悔した。

 何も収穫も無く、一休みをしようと吸憩所へ向かうことにした。その道中、チームオセロにはいわゆる能力的に落ちこぼれ魔術士は居ないな、と改めて思った。

 魔術士たるもの、日々の訓練は怠ってはいけないのは当然だ。大抵の魔術士は、13~15歳頃の期間で戦術の基礎や十分な体力をつける。あの少年も今がいちばん苦しい時だ。とはいえ、基本魔術の操りに手こずっているとなると、平均よりは時間が必要そうだ。

 吸憩所に行くには、依頼書が貼られている掲示板の前を通らなければいけなかった。相変わらずわらわらと魔術士達がたむろしていた。

 レン達と同い年くらいの魔術士チームが、ああでもないこうでもないと依頼書を見つめながら話をしていた。今ではレンも、あのような若者達と同じようなことをしている。かつての自分では考えられなかった生き方だった。あの日、ツバサがもし声をかけてくれなかったら。あの日、アルルと再会していなかったら。


「レンさん!」


 嬉しそうな声が背中からした。振り向くと、にこにこと笑みを浮かべたスズナがいた。スズナと現実世界で会うのは久しぶりだった。


「スズナも依頼を探しに来たのか?優秀だな」

「私ももっと強くなりたいので。当然です。レンさんのおかげで王宮宿舎の部屋もありますし」

「スズナはそうか、チームは組んでいないもんな。王宮公認団体か。まあ、その活動タイプだとチームはなかなか難しいよな」

「はい。チームも憧れますけどね少し……そ、そんなことより、レンさん、この後私と一緒にお茶でもどうで―」

「―どこぞのチームオセロのせいでこっちは散々なんだよ」


 チームオセロ、という名刺を耳にして、レンは声のする方に目をやった。見覚えのある若魔術士チーム4人組が、イライラしたような顔つきで、1人の魔術士に言いがかりをつけているようだった。困った顔をしているのはレイナだった。


「あんた達がオセロに高額依頼横取りされたことと、私は関係無いでしょ」

「そうじゃなくて、その依頼うちのチームでやりたいわけ。どうせあんた1人でできるわけないんだから」

「これを先に見つけたのは私よ」

「こんなんやんなくたって、あのベティの店でまだ働いてんだろ?それで良いじゃん。いつまでもオセロに媚び売ってればいいんだよ」


 馬鹿にしたような笑い声が響く。レイナは依頼書と、元チーム仲間をチラチラと交互に見ていた。右手にはハコを握りしめていた。レンはハッとした。


「ああ、あの男魔術士、この前俺の顔面殴ってきた暴漢だ。通りで見たことあると思った」

「殴ってきた暴漢……?レンさん、なんてことを……というか、あんな魔術士の喧嘩放っておきましょ、いずれ落ち着きますよ、こんな王宮で魔術飛ばすとも思えません」

「うーん、まあそうなんだけどね……」

「え、レンさんちょっと」


 多少気まずそうな足取りでレンはレイナ達に歩み寄った。レイナの肩をポンポンと叩くと、レイナは振り向いて目をまんまるにした。


「ハコを吸いに行くんでしょ、レイナ。一緒に行こう」


 半ば強引にレイナの腕を掴むと、レンは4人の魔術士達に向かって申し訳なさそうに言った。


「もう君達とはバッティングしないようにするからさ。この前はごめん。依頼書は早いもん勝ちなんだから、今回はレイナに譲ってよ」

「は、お前チームオセロの……謝って済むと思って―」

「この前俺の顔面殴ったでしょ?それでおあいこにしてよ」


 男魔術士は、先日の戦闘を思い出したのか人相を変えて、仲間たちに声をかけ、その場を立ち去って行った。スズナがあわあわとした表情でレンに駆け寄る。何とも言えない顔でレイナは礼を言った。


「ありがとう、何か助けて貰っちゃったみたいで。レン……くんって、そういうことするタイプだったんだ」

「レイナには迷惑ばかりかけてるからさ。それにオセロのあの言われよう、レイナを奴隷扱いしてるみたいな勘違いをされそうだなって思って」

「はーん、なるほどね。……でも実際ハコは吸いに行こうと思っててさ、助かったわ。依頼書も貰えたし、一石二鳥……えーっと、この方はお知り合い?凄い目の敵にされてるような気がしてならないんだけど」


 レン、レイナ、スズナの3人は吸憩所へ向かった。ベンチに座り、レンとレイナはハコを口に加える。何故かレンが女子2人の間に挟まって座っていた。


「スズナ、吸う人じゃないのに大丈夫かついてきて。匂いとか、嫌じゃないの」

「大丈夫です」


 スズナはすっかりふくれっ面をしていた。他人の"そういうこと"に鋭いレイナは、スズナの不機嫌そうな顔と何も気にしていなさそうなレンの様子を見て、色々と察して苦笑いをした。


「自己紹介が送れました。私はスズナと言います。レンさんの……遠い親戚です」

「遠い親戚ねえ」

「本当です!」

「本当なの?」

「……本当だな」


 あながち間違いでは無い表現だ。1人で笑いそうになって、レンは深くハコを吸い込んだ。


「そんなこと言ったら辿れば人類みんな親戚だけどね」

「ふふっ」

「レンさん何笑ってるんですか!貴方は……貴方は誰なんです」

「あー……私は、レイナ。レイナ・ボワー。レンくんとは……と言うより、彼のチームメンバーのツバサと……いや、ベティと……その」

「何で曖昧に濁してるんです」

「俺のチームメンバーのベティと友達なんだ。スズナはベティのこと知ってるだろ。前に怪我を治してくれた」

「知ってます!というかベティさんのご友人だったんですね!それならそうと早く言ってくださいよ」


 何だかやりにくい。レイナは1人で気恥ずかしくなっていた。ハコを吸うと、吸いすぎて思わずむせてしまった。大丈夫、とレンに声をかけられるがそれすらも恥ずかしい。レイナはそっぽを向いてハコを口にした。小声でボソボソとスズナが話し出す。レイナには7割くらい話の意味がよく分からなかった。


「レンさん、この前集会で提案した話……私はレンさんのことだから何か事情はあるんだと思ってます。やっぱり、フェアリーの魔術士と行動を共にしていたんですか。その人を守るためですか。その人を守るために、私たちを……一族を巻き込んだんですか」

「……本当だとしたら、スズナはどうする?」

「私は、何だっていいんです。ただ、レンさんが元気に、今までみたいに強い魔術士でいてくれれば、私はそれで」

「俺は別に強くないよ。今までも、今だって。でも、ありがとう。俺も同じ気持ち。スズナが元気でいてくれれば、依頼に励んでくれればそれでいい」


 スズナは口をつぐんだ。同じ気持ち、と言われて嬉しいはずなのに、嬉しくない。とても同じ気持ちだとは思えない。でも嘘をついているようにも思えない。スズナには、レンの気持ちがよく分からなかった。ふぅーっとレンが煙を吐く。慣れない独特な香りが、スズナの鼻腔を刺す。


「やっぱり、ここは匂いがキツイです」

「そうだよね、ごめん……。今度は、あ、ベティがレストランをここの近くでやってるんだよ。あそこなら落ち着いて話せるし、スイーツも美味しいから」

「スイーツ、ですか……ベティさんお店やってたんですね。それは行ってみたいです」


 なるべく2人に視線を送らないようにして、レイナは表情を変えずに何も無い前をまっすぐ見つめていた。ちらっとレンがこちらを見た気がしたが、レイナは知らん振りをした。


「ごめんスズナ。俺ちょっとこの後約束あって」


 吸いかけのハコをレンは処分すると、立ち上がった。じゃあまた、とレイナにも軽く声をかけると、腰掛けたままのスズナの頭をポンポンと叩いた。レイナはレンの背中を見送ると、すっかり赤くなってうつむいてるスズナに目をやった。ちょうど良い言葉は無いものか、レイナは口を曲げながら考えた。もう用は何も無いはずなのに、スズナは座ったまま動じない。


「まあ、ちょっと早すぎたんだよ。何事もタイミングって言うでしょ」

「……」

「私はやめといた方が良いと思うけどね、あんな男」

「何でですか。レンさんは強くて誰にでも優しくて、それに、私を助けてくれたんです。あんな醜い魔術を使っていた私を」

「私は直接的にレンと関わったことはあまり無いんだけど、あの人たぶん上手いんだよ。良い人っぽい振る舞いが。しかもそれ無意識にやってるからタチが悪い。それで貴方みたいな被害者も出る」

「レンさんは、チームの人と一緒にいる時は違うんですか」

「……そりゃね。興味ある人と無い人の差が凄い。だから興味無い人にはうわべなことしか言わないんだ。さっきだって私の事は別にどうでもよかったと思う。ただ、自分のチームの風評被害が出そうになったもんだから来たんだと思うよ。まあ、スズナちゃんのことは親戚だし妹みたいな感じに大切に思ってるのかもだけど」


 スズナはまだ黙りこくった。少し話しすぎたかもしれない、とレイナは気まずくなり3本目のハコに火を灯した。


「それでも頑張るっていうなら私は、まあ応援するよ」

「えっ」

「スズナちゃんが、レンの天然お姫様彼女に勝てれば良いんだから。強敵だと思うけど、面白そうだから私は応援する」

「て、天然お姫様……何か私と真反対な気がします……」

「そうは言ってもさ、意外と縁がある人って分からないものだよ。男か女かも分からないし、魔術士とも限らないし、めちゃくちゃ嫌いな奴かもしれないし」

「レイナさんはそういう経験をしたことがあるんですね。でも、レイナさんって結構良い人なんですね。それだけは分かりました」


 初めて笑顔を見せてきたスズナに、レイナはきょとんとした。得意げにレイナはすまして答えた。


「そう、そういうこと。良い人ってこういう人のこと」

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