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永遠対立関係  作者: P-Rin.
6章 要塞
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6-8 やり直す

 部屋のドアがいきなり開いて、アルルはツバサの腕を掴んだ。入ってきたのは先ほどの男魔術士だった。


 「よく眠れたかね、アルル」

 「貴方は誰?」

 「そうか、きちんと対面するのは初めてだったな。いつもツバサが世話になっている。私は彼の父、カーティスだ。レイナ・ボワーを囮にしたのは私だ。すまないね、友達を利用してしまって。部下のカーターの話によれば、ツバサはチームを結成しているようだが。お前はそんなことをしている場合じゃないんだよ」

 「そんなこと?……あんたこそ、母さん達のことも俺達のことも見捨てて出ていったくせに、何なんだよ。いきなり死んだって言われて、実は生きてましたとかさ。俺とアスカがどんな思いで今まで生きてきたか、何にも知らないくせに。そんなこと呼ばわりされる筋合いは無い。俺はチームメンバーと一緒にここから帰る」

 「申し訳ないがそれはできない。もう1回始めからやり直さなければならないのだよ。お前は私の組織の一員になれ。そのうちアスカもこちらから迎えに行く」

 「始めからやり直すだと……?」


  カーティスは突如右手を伸ばした。ツバサははっとしてアルルを守るように倒れ込んだ。空いている右手で瞬時に魔術を発動させ、黒の大きなバリアを張った。手下が次々に発射する光線はツバサのバリアに当たり、煙をシュウと上げた。アルルは腕の中でありがとう、と小さな声で礼を言うと自分もすぐに立ち上がりツバサの援護に回った。

  いつの間にか2人の背後にあった扉も開き、面をした魔術士らがやってきていた。アルルも光のバリアを張って攻撃を防いだ。カーティスの両目は真っ赤に不気味に光り、背中にはコウモリのような翼が生えた。


 「大人しく従え。本当にお前は孤独の道を進むことになるぞ」


  カーティスは飛び上がり、思いきりツバサのバリアに体当りした。バリアにヒビが入り、バラバラに割れる。ツバサとカーティスは同じ黒術のエネルギー源をぶつけ合った。

  カーティスはツバサの父なだけあって、ツバサと同じくパワーを使いすぎると命に危険がある黒術士だった。それはツバサも同じだった。膝に手が付きそうになるのを我慢して、体勢を整える。


 「ツバサ、力を貸すわ」

 「でも俺とアルルの術は、正反対だ……」

 「大丈夫!何とかなる!私、耐えるから。あんた1人じゃここは突破できない」


  ツバサはうなずくと、アルルの手を握った。2人は意識を集中させる。正反対の魔術のはずなのに、互いの魔術は流れるように心地よく身体の中へ入り込んできた。黒い魔術と白い魔術が交互に辺りに輝き始める。カーティスはその様子を見て口元だけで笑った。


 「そう、これが本来使われるべき魔術……しかし、標的を間違っているな。お前達は何故味方である私に反抗するんだ?」

 「ごちゃごちゃうるせえんだよ」


  ツバサがそう叫び、目を見開いた。銀色のツバサの目と、金色のアルルの目が輝いた。


 「融合魔術(フュージョン)天悪(アゲールディアーボル)!!」


  突如、白と黒のパワーはカーティスにまっすぐ向かって発射された。あまりの威力に上から押さえつけられるような圧力感をアルルとツバサは感じた。しっかりと地面に足をつけて、2人は互いの体を支え合いながら力を保った。カーティスは壁を突き抜けて一番奥の部屋の壁まで吹っ飛んだ。距離が遠くなってもまだ2人の魔術は終わらなかった。

  ドクンとツバサは心臓が変に脈打つ音を聞いた。足がふらつき始める。だんだん視界が消えていく。でも今パワーを止めるわけには行かない。カーティスは自分の翼を盾にしてアルルとツバサの攻撃に耐えている。カーティスが力尽きるまで、諦めたくない。


 「殺してやるんだ」


  不意にツバサはそう呟いた。しかし体は言葉とは裏腹に限界を迎えていた。体がよろめき、すぐにアルルが気づいて支えた。その時ツバサの右目がカーティスのように赤くなっていた。アルルは徐々にパワーを弱くさせて、ツバサの魔術も共にコントロールした。


 「まだだ、まだ、あいつはくたばってない」


  そう言った直後、ツバサは口から血を吐き出してしまった。吐き出した血は密着したように支えていたアルルのローブに思いきりかかった。アルルはそんなことは気にせずにゆっくりと魔術の力を留めていった。魔術が消え、はるか向こうまで飛ばされたカーティスを探した。その壁は壊れ、外の景色が見えていた。アルルは肩で息をしながら辺りを見回した。もう魔術士は居なかった。


 「悪い……アルル、ローブが……」


  ツバサがアルルの腕からするりと離れ、ドスンと音がした。ツバサはうっすら開いた目から心配そうな顔をしているアルルの姿を捉えた。アルルはツバサの手を握って明るい声で言った。


 「……皆でここから帰ろう」


  そう言った時、ツバサは手を伸ばしてアルルの頬を撫でて、声を漏らした。


 「ナターシャ……様」

 「……わ、私はナターシャじゃないわ!ツバサ、しっかりして!」


  既にツバサは目を閉じてしまっていた。アルルは思わず部屋にまだ平然とかけてあった"ナターシャ"の絵に目をやった。"ナターシャ"の金色の瞳と目が合った気がした。いや、あの絵は両目とも閉じていたはずだ。アルルが目をぱちぱちさせてもう一度見ると、"ナターシャ"も目を閉じていた。

次回は明日22時過ぎに投稿予定です。

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